FSRU 浮体式LNG貯蔵再ガス化設備
環境にやさしいエネルギーとして世界でLNG(液化天然ガス)の需要が増える中、その導入を低コスト、短期間で実現するための特別なソリューションがあります。それが「FSRU」。商船三井(MOL)は日本で唯一のFSRU保有・操業会社です。
商船三井(MOL)のFSRU
FSRUの機能概要と、当社のFSRU関連ソリューションの提供領域についてご紹介します。
海上に浮かぶ再ガス化設備
FSRUは浮体式LNG貯蔵再ガス化設備 (Floating Storage and Regasification Unit)の略称です。天然ガスは、産出国で約-160℃に冷やされて体積が約600分の1のLNGになり、輸送効率を向上させた上でLNG船で数千海里に渡って輸送されます。消費国では再び液体をガスに戻す必要がありますが、FSRUは陸上のLNG受入基地に代わって、洋上でLNGを受け入れて貯蔵し、顧客ニーズに応じてLNGを温めて再ガス化を行い、高圧ガスとして送出する機能を有しています。LNGを新たに輸入する国や、素早く都市ガスや電力の需要を満たしたい国において、普及が進んでいるソリューションです。

FSRU導入をトータルサポート
FSRUを導入するにあたっては、気象・海象リスクを考慮した設置サイトの選定や、LNG受入基地全体としての安全操業に向けた設計が必要となります。当社は、LNG輸送での豊富な経験を活かし、事業投資決定前のFS(実現可能性調査:Feasibility Study)から、気象・海象条件の分析や、安全操業を行う為のLNG受入基地の基礎設計へのアドバイスなど、プロジェクトの初期段階からのサポートも行うことができます。
FSRU×商船三井(MOL)の強み
総合海運企業としてのネットワーク及び操業経験を活かし、FSRUに付加価値を加えたサービスを提供します。

個々のプロジェクトの多様なニーズに対応
プロジェクト開始以降は、LNG船入出港の為の港湾サービスやFSRUが着桟する桟橋の保守管理など、FSRUだけではなく、その周辺事業の手配も必要となります。当社は世界各地の港湾代理店とのつながりを活かした港湾サービスの提供、及び30年以上に亘るLNGの輸送実績及びノウハウを活かした桟橋の保守管理の受託など、プロジェクト全体をサポートするためのソリューションを提供可能です。

運転最適化に向けた新しい取り組み
FSRUは初めての実地導入が2005年と比較的新しいタイプのソリューションであるため、今後性能の改良が期待されます。当社は、世界最大のLNG船事業者及び本邦企業唯一のFSRUの保有・操業会社として、操業経験から得られた知見を活用し、FSRUの性能改良や運転最適化に向けた新しい取り組みを推進しています。
Cryo-Powered Regas(再ガス冷熱発電)
FSRUの環境負荷を低減する新技術「Cryo-Powered Regas(再ガス冷熱発電)」の開発に、韓国・大宇造船海洋株式会社(Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering、以下"DSME")と共同で取り組んでいます。FSRUの再ガス化プロセスにこの技術を導入することにより、これまで海水に排出していたLNG冷熱を発電エネルギーとして利用することが可能となります。FSRUの燃料消費を減らすことでCO2排出を最大で約50%削減する効果が期待できるととともに、燃料費の削減にも貢献します。当該技術は陸上LNG基地で40年以上の操業実績のある技術ですが、FSRU向けに同技術を適用して設計基本承認(AIP: Approval in Principle)を取得したのは世界で初めてとなります。
運航データ利活用プロジェクト『FOCUS』
当社が取り組んでいる運航データ利活用プロジェクト「FOCUS」(Fleet Optimal Control Unified System)の一環として、FSRUから詳細な貨物・機器データ等を収集し、クラウド上のデータプラットフォームに保管のうえ、高度な操業モニタリングや機器の運転最適化に資するアプリケーションを、DSMEと共同で開発しています 。FSRUは陸地近くで操業する設備であるからこそ、外洋を航行する船舶が用いる衛星通信よりも高速で大容量な通信技術を利用することができます。その特性を活かして多様なデータを共有し、船陸間の連携をより一層深度化させるアプリケーションを通じて、FSRUの更なる安全操業を実現します。


資金調達力
お客様にコスト競争力のあるサービスを提供できるよう、当社は資金調達面にも重点を置き、様々な取り組みを行っています。国内外の様々な⾦融機関から万全のサポートを受けていることに加え、プロジェクトファイナンスの組成や、資⾦⽤途を環境関連やSDGs関連に限定した社債の発⾏等、多様な手法による資⾦調達実績を有しています。FSRUにおいても長期的な契約を確実に履行するために、財務基盤を強固なものとするべく、事業拡大を図りながら、財務規律に十分目配りした運営を行っています。
FSRU導入までの流れ
当社はお客様のFSRU導入にあたり、プロジェクトの調査段階から実際の操業まで一貫してサポート致します。また、総合海運企業としての豊富な経験を生かし、FSRUのみならず、関連サービスを提供することで、プロジェクト全体を支えます。
FSRUを活かした新たなサービス
FSRUをその他のサービスと組み合わせることでお客様の多様なニーズにお応えします。

LNG発電船事業
近年は当社のFSRUに関する知見を用いた新たな事業領域として、LNG発電船事業に取り組んでいます。これは洋上にFSRUと発電船を設置し、LNG船から受け取ったLNGをFSRUで再ガス化し発電船に供給することで、発電船はガスを燃料として発電を行い、電力を陸上に供給するというものです。当社は発電船事業のパイオニアであるトルコのKarpowershipと提携し「KARMOL」のブランド名でLNG発電船事業を展開しています。
LNG輸送との一体型ソリューション
当社は世界最大規模のLNG船隊を運航し、30年以上に渡る豊富なLNG輸送の実績を有しております。FSRUや発電船事業に加えて、従来から当社が強みを持つLNG輸送、またFSRUから小型LNG船への積み替えによる需要が限定的な地域への輸送など、様々なサービスを組み合わせることでLNGバリューチェーンにおける「一体型ソリューション」提供を目指します。
商船三井(MOL)が保有するFSRUの設備
FSRUは通常のLNG船と同様に、約-160℃のLNGをタンクで貯蔵しながら航行することが出来るよう推進性能を持たせることも可能な上、本船上でLNGを再ガス化して、高圧ガスとして送出できる点に特徴があります。

高圧ポンプ
LNGを高圧化し、ベーパライザー(気化器)に送り込むのが高圧ポンプです。内部にある羽根車を回転させることで、高い圧力をかけることができます。約-160℃という超低温状態でも安定的に稼働するための強度を確保しています。

ベーパライザー(気化器)
高圧になったLNGを再ガス化させる設備が、ベーパライザー(気化器)です。高圧のLNGが通るパイプチューブの周りに、常温の海水あるいは不凍液であるグリコール水を循環させることで熱交換を行い、LNGを再ガス化します。