FAQ(よくある質問)
BLUE ACTION NET-ZERO ALLIANCE
(カーボンインセット・Book and Claimプログラム)
本FAQは、Book and Claim Communityが作成した英語版FAQを基に、商船三井が日本語訳を行った参考情報です。
内容は、2026年1月23日時点の原文FAQに準拠していますが、正式な見解や解釈については原文を優先してください。
原文のFAQは、Book and Claim Community公式サイトよりご覧いただけます。※外部サイトへ移動します。
FAQ(よくある質問)
様々な輸送モードにまたがるブックアンドクレーム
ブックアンドクレームは強力な脱炭素化の手段ですが、私たちのツールボックスにある多くの手段のうちの一つに過ぎません。実際には、直接調達など、他のアプローチを優先すべき場面も数多く存在します。では、この点を踏まえ、ブックアンドクレームが適切な場合とそうでない場合をどのように判断すればよいのでしょうか。
これら4つの基準は、ブックアンドクレームが検討に値するかどうかを判断する際に有用です。
1. 新興市場の初期段階では、代替燃料の供給が制限されています。アクセス制約により燃料や低炭素サービスを直接購買できない場合、または、自社で低炭素商品を通常は直接調達していない場合に、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、出張に伴う排出量の削減を希望するけれども、ジェット燃料を直接購入しておらず、航空会社や物流サービスプロバイダー(LSP)と容易に連携できない場合、ブックアンドクレーム証書を購入し、排出量に対応することができます。
2. 市場が成長する一方、低炭素燃料や低炭素サービスはすべての地域で容易に利用できるとは限りません。また、排出量の観点からは、遠くにある低炭素燃料や、製造地の近くにある低炭素輸送機器を長距離輸送して使用することは必ずしも合理的とは言えません。自社の地域で低炭素製品や低炭素サービスを調達できない場合、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、持続可能な燃料(SAF)の利用拡大を目指しているものの、SAFを利用できる空港を定期的に利用していない航空会社の場合、排出量の一部に対応する手段として、ブックアンドクレーム証書の購入を検討してもよいでしょう。
3. サプライチェーンは長大かつ複雑なことが多く、末端のサプライチェーンパートナーを特定し、影響を及ぼすことは困難です。スコープ3の排出源がサプライチェーンの奥深くに存在し、対応が極めて難しい場合には、ブックアンドクレームはそのスコープ3の排出量への対応策として強力な選択肢となり得ます。
例えば、物流サービスプロバイダー(LSP)やキャリアにとって、荷動きが多い輸送ルートの中で、小売業者の特定の貨物を効率的に低排出トラック車両に振り分けることは、実務上困難な場合があります。結果として、追加コストが発生するだけでなく、排出量が増加する可能性もあります。このような場合に、ブックアンドクレーム方式は、LSPが効率的に脱炭素化を進めるための有力な手段となり得ます。
4. 脱炭素化に向けた移行では、多くの産業において新たな生産拠点の建設や既存設備の改修に多額の資本投資が必要となり、その結果、低炭素代替品の価格が上昇する可能性があります。ブックアンドクレーム証書の購入がそのコスト上乗せ分を直接補い、さらに、普及が進んだ段階で低炭素代替品と従来品の価格が均衡する方向へ業界を後押しできるのであれば、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、海運事業者が、将来の脱炭素化においてグリーンメタノールなど新たな技術が不可欠だと認識していても、前述の課題のいずれかに直面する場合があります。ブックアンドクレーム証書の活用により、企業はこうした新しい技術を現時点から支援することができます。
ブックアンドクレームの領域において、「一次データ」と「二次データ」という基本的な概念は重要ですが、見過ごされることの多いものです。最も熟練した実践者でさえ、予期せぬデータの不整合により混乱することがあります。例えば、「実測値を使用する」あるいは「データベースからデフォルト値を参照する」という言葉がよく聞かれますが、これらは何を意味しているのでしょうか。また、データについて他に議論の方法があるのでしょうか。以下に、一次データと二次データの違いを示します。
1. 一次データ
一次データとは、実測によって得られるプロセスや活動の定量的な値、または実測値に基づいて行われる計算を指します(ISO 14083:2023)。
一次データには、燃料の領収書のような明確な情報から、年間エネルギー消費量を反映した集計値まで、様々なデータが含まれます。一次データは、輸送サービスを提供する事業者や物流拠点を運営する事業者がスコープ1の温室効果ガス(GHG)排出量を算定する際、及びキャリアからスコープ3排出量算定のためにデータを収集する際に、推奨されるデータ形式です。
2. 二次データ
二次データとは、一次データ以外のすべてのデータを指し、さらに「モデル化データ」と「デフォルト値」に分類されます(詳細はISOリンク参照)。
3. モデル化データ
モデル化データとは、一次データ及び/または輸送活動や物流拠点の運営により生じるGHG排出量に関連する、パラメータを含むデータを指します。企業や排出量算定・報告ツールの提供者は、モデル化データを使用し、貨物、輸送経路の詳細、輸送機器情報、その他の要素といった利用可能な情報に基づいて、エネルギー消費量や排出量を推計します。モデル化データの精度は、利用可能な情報の詳細レベルや、モデル化時に設定された仮定に応じて異なります。
4. デフォルト値
より良いデータが入手できない場合には、デフォルト値を使用します。
デフォルト値とは、業界で一般的に行われている運用から導かれた指標であり、排出量の大まかな目安を示します。また、排出の多い箇所(ホットスポット)を明らかにするなど、特定の用途に役立つ場合もあります。ただし、デフォルト値は、計算の入力値として用いられる前提条件に本質的に依存しています。そのため、利用者にその前提条件を完全に提示し、理解を得ることが不可欠です。そうでない場合、不適切な適用による深刻なリスクが生じます。したがって、デフォルト値に依存すると不確実性が高まる可能性があります。ブックアンドクレームコミュニティでは、使用するデフォルト値の出所を明示することや、パートナーと協力してより具体的な情報を収集することが重要だと認識しています。こうした取り組みによって、全体の精度を高めることができるでしょう。
最終的に、ブックアンドクレームを用いたサービスを評価、提供する際には、自社データの把握が不可欠です。バリューチェーンの主張を裏付ける排出量計算では一次データの使用が望ましいとされていますが、実際には異なる種類のデータを組み合わせる必要があることが認識されています。
チェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)システム
環境属性データは二酸化炭素削減効果の重要な根拠となることが多いですが、どのようにすれば主張の信頼性と正確性を担保できるのでしょうか。
特に複雑なサプライチェーンでは、燃料の持続可能性プロファイルの確立、追跡は持続可能性認証制度に依拠しています。これにより、チェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)内の各当事者が、特定の持続可能性基準を満たし、正しい計算方法を適用していることが保証されます。
認証制度では、製品のライフサイクルを追跡するためのアプローチとして、チェーン・オブ・カストディモデルが採用されています。「マスバランス」と呼ばれるモデルは、輸送用燃料のサプライチェーンで特に普及しています。これは簡単には、インプットとして異なる原料が物理的に混合される場合に、アウトプットとして製造される製品の定義をしやすくする仕組みです。マスバランス方式のチェーン・オブ・カストディモデルは、燃料の持続可能性プロファイルを追跡する上で重要な役割を果たします。特に、インフラの事情や効率性の観点から、製造工程や引渡し前のブレンド燃料について、複数の原料を混合する必要がある場合は有効です。マスバランスでは、持続可能な燃料を全体の数量比に応じて追跡し、監査することができます。これにより、その燃料の購入者は低炭素燃料を物理的に分けて管理したり、直接使用したりする必要がなく、環境属性とその環境インパクトを主張することができます。
ブックアンドクレームはこれと同様に柔軟なモデルですが、さらに柔軟性が高く、ブックアンドクレームを使用することで環境属性をその基礎となる燃料の数量から完全に切り離し、別の場所で主張することが可能となります。マスバランスを正しく活用することで、サプライチェーンの下流にある関係者が適切に対応できるようになるでしょう。例えば、レジストリ運営者はソリューションの持続可能性プロファイルを正しく追跡することができ、排出量報告者は燃料の排出プロファイルを正しく算定・配分することができます。輸送におけるブックアンドクレームシステムの新たなベストプラクティスとして、適用可能な場合には、ブックアンドクレームの手続きに入る前提条件として物理的な燃料サプライチェーンのマスバランス証明書の提出を求める運用が定着しつつあります。
これにより、環境属性を切り離す前に、サプライチェーンが特定の持続可能性に関する要件を満たすようになります。ただし、輸送燃料の環境属性を追跡するためのチェーン・オブ・カストディモデルは、マスバランスだけではないことに留意する必要があります。マスバランスと同様に物理的なサプライチェーンを評価するその他のチェーン・オブ・カストディモデルには、以下があります。
・コントロールブレンディング(controlled blending)
・セグリゲート(segregated)
・アイデンティティ・プリザーブド(identity preserved)
注釈:上記のモデルは、上から下の順に、混合の許容度に関する厳格さが高まります。
マスバランス及びこれらの追加モデルの基礎となる要素については、ISO 22095:2020に詳述されています。また、マスバランスが自社のサプライチェーンにおいて果たす役割の詳細については、自社の業界ですでに運用されている認証制度を調べることを推奨します。その他の情報が、燃料提供者、認証機関、またはレジストリ運営者から入手できる場合もあります。認証制度の例は、以下のとおりです。
航空:RSB CORSIA、ISCC CORSIA、RSB EU RED、ISCC EU、RSB Global、ISCC Plus
舶用燃料及びその他:ISCC Plus、RSB Global、ISCC EU、RSB EU RED
3.1.1 チェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)
インプット及びアウトプットとその関連情報が、関連するサプライチェーンの各段階を移動する際に、それらが移転、監視、管理されるプロセスを指します。
3.3 チェーン・オブ・カストディモデル(Chain of Custody models)
3.3.1 アイデンティティ・プリザーブドモデル(Identity Preserved model)
材料または製品が単一ソースに由来し,それらの規定特性がサプライチェーン全体を通して維持されるチェーン・オブ・カストディモデル。
3.3.2 セグリゲートモデル(Segregated model)
材料または製品の規定特性が,最初のインプットから最終アウトプットまで維持されるチェーン・オブ・カストディモデル。(注:インプットに、異なる特性及び/またはグレードを有する材料を加えることは許容されない。)
3.3.3 コントロール・ブレンディングモデル(Controlled Blending model)
一連の規定特性を有する材料または製品が、一定の基準に従って、その一連の特性を有しない材料または製品と混合された結果、最終アウトプットに既知の割合の規定特性が生じるチェーン・オブ・カストディモデル。(注:これに従う主張は、バッチ及び/またはサイトにおける一定の割合を参照する場合がある。)
3.3.4 マスバランスモデル(Mass Balance model)
一連の規定特性を有する材料または製品が、定義された基準に従って、その一連の特性を有しない材料または製品と混合されるチェーン・オブ・カストディモデル。(注:規定特性を有するインプットの割合は、平均的には初期の割合とのみ一致し、実際にはアウトプットごとに変動するのが一般的である。)
3.3.5 ブックアンドクレームモデル(Book and Claim model)
サプライチェーン全体を通して、管理記録フローが必ずしも材料または製品の物理的フローと結び付かないチェーン・オブ・カストディモデル。(注:このチェーン・オブ・カストディモデルは『証書取引モデル』または『クレジット取引』とも呼ばれる。)
環境属性証明書(EAC)
RECは、再生可能資源による1メガワット時の電力の発電に付随する環境属性に関して、その保有者に法的に認められた財産権を表示する取引可能な証書です。RECのそれぞれは、その基礎となる電力から独立して取引することができる固有の証書であり、保有者またはその代理人が無効化手続きを行うことで、そのRECに対応する再生可能エネルギー発電の利用を主張することができます。詳細はCRSの「The Legal Basis for Renewable Energy Certificates」をご参照ください。RECは完全な仕組みではないものの、他のブックアンドクレーム方式が土台として活用できる有益な前例となっています。
この物理的な単位を用いるコンセプトは、「環境属性を主張した」輸送活動量をその他の報告データと併せて集計する際、大口貨物輸送におけるブックアンドクレームの重要な要素となります。一般的には、二酸化炭素排出削減量(トン)ではなく燃料の量または輸送活動量を用いて計算しています。これには理由があります。これらは、スコープ内排出量に対するバリューチェーン外のオフセットではないからです。ある場所で直接かつ検証可能な方法で削減された運行・運航時の排出量は、構造化されたブックアンドクレーム方式を通じて、低排出輸送の環境属性を取得し、無効化することにより、別の場所で主張することができます。この仕組みにより、あたかも主張者が、環境属性をそれが登録されている単位によって消費したかのように扱うことができます。
大口貨物輸送分野のブックアンドクレーム方式がRECモデルに基づき改善する余地のある領域の一つは、検証済みの排出プロファイル、または確立された基準値と比較した検証済み削減量を、直接かつ明確に示すことが挙げられます。物理的な単位を用いるコンセプトを保持しつつ、排出プロファイル報告を標準化・簡素化すること、すなわちそれらの交わらない指標を並べて提示することにより、正確でシンプルな情報開示を促進することができます。
報告と二重計上
ブックアンドクレームプロセスの中で誤った二重計上が最も発生しやすい場面は、主に次の4つです。
⑴ 属性を「登録」する時
同じ低炭素商品に対して2つ以上の属性が発行される場合に発生します。
(例:燃料1単位に対して本来1つの属性のみ作成されるべきところ、2つの属性が作成される場合)
⑵ 属性を「主張」する時
同じ1つの属性に対して複数の利用者が自らのものとして主張する場合に発生します。
(例: 2人以上の船主が、異なる船で異なる航海をしているにもかかわらず、同じ環境属性を主張する場合)
⑶ 属性の追加性を評価する時
属性が作成されたものの、規制遵守が適切に考慮されていない場合に発生します。
(例:あるトラック運送会社がバイオディーゼル1ガロンに由来する属性を主張したが、その属性はすでに陸運の低炭素燃料基準などの規制プログラムによってインセンティブを受けていた場合)
⑷ 属性がブックアンドクレームシステムに組み込まれた時
登録済みの属性が2つ以上のブックアンドクレームシステムにまたがって分配されることにより、二重使用されてしまう場合に発生します。
(例:ある1つのSAFクレジットが複数のレジストリで利用可能となっている場合)
上記の例はそれぞれ、「二重発行」または「二重登録」(1)、「二重主張」(2/3)、「二重目的」(3)、「二重使用」(4)にあたります。
検証と保証
適合性評価の活動は、適合性評価機関と呼ばれる第三者機関に所属する監査人によって実施されます。監査人の仕事は、選定された規格に照らして適合性評価の対象を査定することです。このコミュニティに長く参加している方なら、燃料関連の認証制度についてよく耳にされていることでしょう。例えば、RSBの認証制度では、「対象」が燃料であり、規格はRSB CORSIA、適合性評価機関としてSCSやSGS Tecnosが指定されています。
例:ある航空会社が、年次ESGレポートで当該年度のGHG排出量の総量が二酸化炭素5,000万トン相当であったと報告したとします。これは「主張」であり、検証の「対象」です。投資家、パートナー、及びその他のステークホルダーがこの数値を信頼するためには、裏付けが必要です。この裏付けは、検証機関(Verification body)と呼ばれる特定の適合性評価機関によって提供されます。検証機関はその主張を評価し、一定の保証水準(例:限定的保証、合理的保証)で主張を認めた旨の検証声明書を作成します。監査人が申告された値を評価する際には、ISO 14083 を基準として用いる場合があります。これが、検証業務(Verification engagement)の一例です。
では、妥当性確認(Validation)はどうでしょうか。同じものと言えるのでしょうか。検証(Verification)と妥当性確認(Validation)はいずれも、主張として示された情報の信頼性を保証するという点で共通していますが、両者は、評価の対象となる主張のタイムラインに基づいて区別されます。検証(Verification)は、すでに発生した主張やすでに得られている結果を対象に実施されます(ありのままの事実であることの確認)。一方、妥当性確認(Validation)は、将来的に意図される利用や見込まれる結果に関する主張を対象に実施されます(もっともらしさの確認)。したがって、もしこの航空会社が上記に加えて2050年までのゼロエミッション達成も約束し、この主張について適合性評価サービスを依頼した場合、それは妥当性確認業務(Validation engagement)に該当します。では、先ほどの航空会社の例にあった、第三者機関のような検証機関についてはどうでしょうか。これらの検証機関は、保証業務を行う際にルールを遵守しなければならないのでしょうか。そのとおりです。検証機関が従うべきルールも複数あります。では、これらの検証機関自身も評価を受けるのでしょうか。はい、一部の検証機関は評価を受けています。
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