船上データ分析統合基盤
FOCUSは船上データの力で船の安全、環境、商流を強化する為の新たなスタンダードを創造し、次世代の海運Digital Transformation(DX)を実現します。
FOCUSは、約270隻の船舶から収集される最大1万点/隻のセンサーデータと、約650隻の船舶からのレポート情報が統合されたシステムです。また搭載されているアプリケーションは、商船三井が総合海運会社として長年にわたり蓄積してきた運航のノウハウを解析技術に取り入れています。
FOCUSは多様な船種や海運関係者のニーズに応える機能を提供し、船舶運航の効率化と環境保護を支援することで、海運業界のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。船主、オペレーター、船舶管理会社など、幅広いステークホルダーに対して価値を提供し、海運業界の発展に貢献しています。
船舶の安全運航と環境への影響を減らすため、実際の海域で運航中の船から得られる航海や機関に関する詳細なデータを集めて管理するシステムを構築しています。このシステムにより、船舶の運航を高度に監視し、推進力の性能を分析することが可能になります。
FOCUSでは、データの収集と活用を以下の手順で行っています。
1.データ収集:船舶や岸壁に設置されたIoTデバイスからのデータを、Fleet Transfer、VDR(Voyage Data Recorder)、データロガー、IAS(Integrated Automation System)、およびその他のセンサーを通じて収集します。
2.送信:収集したデータは、Amazon Cloudのデータベースへと送信されます。
3.蓄積:データはデータベースに蓄積され、PC、スマートフォン、タブレットなどのデバイスからアクセス可能になります。
4.活用(アプリケーション):収集されたデータは、自動メール送信、エンジンや機械の監視、正午報告データの生成など、様々なアプリケーションを通じて活用されます。また、速度性能の分析や正午報告の監視などの機能も提供されています。
このプロセスにより、FOCUSは船舶運航の効率化と安全性の向上、環境への影響の軽減を目指しています。データの収集から活用に至る一連の流れは、海運業界のデジタルトランスフォーメーションを支える重要な基盤となっています。
FOCUSでは収集した運航データを基に、本船の推進性能解析を行っています。
船の燃料消費量とスピードの関係が一目でわかり、最適な運航・修繕計画の策定に活用されています。
省エネデバイスの搭載や、船体表面のクリーニングなどを実施した際に、Fleet transferから本船の運航データを最大1秒間隔で収集・活用して施策前後のスピコンを解析することで、施策のタイムリーな効果検証を実現しています。この取り組みにより各種施策の評価を迅速に行い、他船への施策の水平展開をスピーディに実施しています。
船体表面に海洋生物が付着すると船の推進抵抗が大きくなり、同じ主機出力でも出せる船速が低下します。FOCUSでは生物汚損の指標となる船速低下を時系列でモニタリングすることで、最適なメンテナンスをサポートし、無駄な燃料消費を防ぎます。
各機器から収集した高頻度のセンサーデータからは、様々なトラブルの兆候を把握することができます。主機の排ガス温度と掃気温度が不自然に上昇していることから主機のピストンを確認したところ、ピストンリングの折損が発見された事例もあります。機器の状態を把握することで、船の機器故障によるダウンタイムの軽減に貢献しています。
商船三井は、環境ビジョンの一環として設定した目標「2025年度に2019年度比で燃費効率を5%削減」を達成するために、FOCUSを活用しています。この目標は、燃料の消費量を減らし、CO2排出量を削減することで、より持続可能な運航を実現することを意図しています。FOCUSを使用することで、船舶の運航データを分析し、燃費効率の改善点を特定することが可能になります。これにより、商船三井は環境への影響を軽減しつつ、業務の効率を向上させるための取り組みを進めています。
DarWINプロジェクトは、効率運航と省エネデバイスの導入を推進し、GHG排出量を削減することを目指しています。
各部門の効率運航プロジェクトの進捗は、直感的に理解できるように設計されており、省エネ施策の導入による燃料削減の効果を時系列で追跡することが可能です。さらに、月次の進捗状況と成果に関する報告書が関連部門に配布され、設定された目標達成に向けた取り組みが促進されています。このプロセスにより、組織全体での効率性と省エネルギーの取り組みが強化され、より持続可能な運航を目指しています。
上図はイメージのため、実数値とは異なります。
FOCUSでは、本船機器の状態が把握できるセンサーデータを高頻度に収集しており、収集されたデータを分析して、トラブルが発生する可能性が高い船舶を自動的に特定します。
海上安全部では、FOCUSによって抽出された船舶の状態を監視し、異常がないかを確認します。また、船舶管理会社との間で情報共有を行い、船舶の安全を確保するための連携を強化しています。このプロセスにより、船舶の運航中に発生する問題を早期に発見し、対応することが可能になります。
株式会社リコーの360度カメラ『RICOH THETA』とバーチャルツアー作成サービス『THETA 360.biz』を活用したバーチャル訪船アプリケーション『Fleet Tour』。
『Fleet Tour』を通じて、船舶管理会社やオペレーターが、パソコンやスマートフォンから、船内各所の360度写真・動画を閲覧可能となり、あたかもバーチャル上で訪船しているかのように、船内の様々な場所を直感的に把握可能になります。 加えて、当社陸上従業員にとっても、船は全長300m以上にも及びうる巨大な構造物であるため限られた時間内で全域を見学可能な機会は限られる、図面や従来の平面写真では船の構造が直感的に把握しにくい、といった課題を『Fleet Tour』は解決します。
FOCUSは、日本海事協会 (ClassNK) が提供するInnovation Endorsement (IE) 認証を取得しています。
IE認証とは、第三者認証を通じて革新的な取り組みをサポートするための枠組みであり、FOCUSの先進的なデータ活用事例や、安全かつ環境に配慮した運航への貢献が、革新的な取り組みとして高く評価されました。