BLUE ACTION NET-ZERO ALLIANCE
(カーボンインセット・Book and Claimプログラム)
本ページ(参考資料とFAQ)は、Book and Claim Communityが作成した英語版コンテンツを基に、株式会社商船三井が日本語訳を行った参考情報です。
本ページの内容は、2026年4月13日時点の英語原文に準拠していますが、正式な見解・解釈については英語原文を優先してください。
英語原文(Educational resources & FAQ)は、Book and Claim Community公式サイトよりご覧いただけます。※外部サイトへ移動します。
Book and Claim Communityの関係者をはじめ、多くの大口貨物輸送サービス提供者および顧客は自社の輸送由来排出量への対応と削減を目指しています。一方で、低炭素燃料のコスト負担は大きく、脱炭素化が困難と捉える組織も多くあります。同時に、輸送サービスを利用する顧客企業は、自社の間接排出(スコープ3)を削減し、自社の気候変動に対する目標を達成するための方法を模索しています。しかし、こうした顧客企業は一般に低炭素輸送用燃料を自ら調達していないため、複雑な国際物流業界に対応し、低排出な代替手段にアクセスすることが困難です。
ブックアンドクレームは、供給と需要を結び付けるのに役立つチェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)モデルです。輸送事業者の意欲を支援し、現在必要とされ、将来的に拡大が期待される低炭素輸送燃料で船舶・車両・航空機が確実に稼働するようにします。
チェーン・オブ・カストディ、すなわち加工流通過程の管理は通常、燃料認証から始まります。その運用はレジストリなどのブックアンドクレームシステムによって円滑に進められ、最終的にGHGインベントリにおいて、関連付けられた低排出プロファイルが明確に主張されることで完了します。エンドユーザーが低排出輸送ソリューションによって、GHGインベントリを年ごとに削減できるようになれば、業界は先進的な燃料の価格プレミアムを吸収し、低炭素輸送市場の成長を加速させることができます。
ブックアンドクレームシステムを機能させるには様々な要素があり、エコシステムの他の領域でも分かりやすい資料が整備されています。
以下のコンテンツでは、ブックアンドクレームコミュニティのメンバーと同じレベルで理解できるよう、主要な概念を紹介し、整理します。本資料はまた、脱炭素輸送の実践を発展させることを目的に、ブックアンドクレームシステムの活用に向けて、さらなる一歩を踏み出す一助となることを意図しています。本資料をご活用いただき、ご質問がありましたら、Secretariat@BookAndClaimCommunity.orgまでご連絡ください。
海運セクターは国際貿易において重要な役割を担っています。世界貿易の80%以上(体積ベース)を担う一方で、年間の温室効果ガス(GHG)排出総量は世界全体の約3%にとどまっています。国際海事機関(IMO)および欧州連合は、排出削減に向けた厳格なロードマップを示しており、低炭素燃料およびゼロエミッション燃料の導入が必要とされています。
しかし、こうした排出削減に向けた旅に乗り出すにあたっては、これらの燃料の高いコストや入手可能性が障壁となり、価格に敏感な貨物(例:コモディティ)では、特に問題となります。こうした状況を踏まえると、ブックアンドクレームのようなマーケットベースのメカニズムの重要性が強調されます。このメカニズムは、サプライチェーンの排出量に透明性をもたらし、大口貨物輸送の脱炭素化の先導者と企業の需要家を結び付けることで、低炭素燃料およびゼロエミッション燃料の導入を加速することができます。こうした点は、ブックアンドクレームコミュニティ内でも広く議論されてきました。
海運にブックアンドクレームシステムの導入を進めるにあたっては、いくつかの課題があります。具体的には、燃料の種類や排出係数が多岐にわたる点、規制において燃料の排出についてはライフサイクル全体の評価への移行が進んでいる点(例:最近では2023年7月、IMOがWell-to-Wakeを業界全体で採用)、船種や船舶サイズがエネルギー効率、ひいては排出原単位指標に影響を与える点が挙げられます。

さらに、運航から得られるデータのアクセス性や正確性が不足しているため、合理的保証が得られる水準での排出量の算定が妨げられています。このことは、信頼性のある報告メカニズムの必要性を浮き彫りにしています。
これらの課題に対応するため、Maersk McKinney Moller Center for Zero Carbon Shipping、RMI(Katalist)、RSB、123 Carbonなどの複数のイニシアチブがブックアンドクレームシステムの開発を進めています。また、一部のキャリアでは、低排出輸送サービスへの需要に応えるため、社内で独自のソリューションを開発しています。この課題への取り組み方は、舶用燃料の環境特性のみに着目する例や、海上輸送サービス全体の排出プロファイルに着目する例など、各社それぞれに異なります。また、排出原単位を示すためにエネルギー量ではなく輸送量を用いる例や、航海ごとのデータではなく年次データを用いる例もあります。アプローチには違いがあるものの、いずれの仕組みも、グリーンシッピングの需要と供給を結び付けることを目指し、低炭素燃料の利用を奨励し、海運の脱炭素化の支援に貢献します。
海運セクターの排出量に対応していくためには、方法論面・技術面の複数のアプローチが極めて重要です。ただし、このような複数のアプローチを取ることで、二重計上のリスクが高まります。また、それぞれのソリューションの堅牢性、一貫性の判断が難しくなります。したがって、輸送バリューチェーン全体で脱炭素目標の達成に向けて確実に前進するための、連携の必要性が高まっています。
2025年4月18日
陸運(トラック輸送)を脱炭素化することは極めて重要です。このセクターは広大かつ多様であり、数台のトラックを運用する小規模キャリアから、大規模な車両群や複合輸送ネットワークを運用する大手物流サービスプロバイダー(LSP)まで、幅広い層が含まれます。排出削減に加えて、キャリアやLSPが荷主、規制当局、消費者に対し、信頼性が高く透明性のある報告を行うことを求める圧力は一層強まっています。
電化から代替燃料、より高度な物流ルート最適化に至るまで、様々なソリューションが出現していますが、こうしたソリューションの利用は依然として容易ではありません。また、他の輸送モードと同様に、自社のオペレーションとこれらのソリューションの連続性を追跡・トレースすることは、サプライチェーン上の課題として残っています。市場は、透明性の確保と説明責任を果たすことを求めています。ブックアンドクレームシステムは、これらの課題に対応する有望なアプローチです。ここでは、陸運におけるブックアンドクレームの現状を概観し、現在取り組まれている課題を確認し、今後に向けた協働の道筋を示します。
上記の理由から、陸運における排出量に関する実務は、他の輸送モードと比べて相対的に一貫性に欠けたものになっています。そのため、ブックアンドクレームシステムの開発と並行して、データのアクセス性や正確性、および排出量算定手法のばらつきといった課題への対応が進められています。

まずは供給面から、いくつか重要な点を取り上げます。小規模な燃料供給インフラが多数存在するため、企業のGHGインベントリに関して、陸運のブックアンドクレームを含む排出量の正確な追跡・報告は複雑です。海運や空運のように集約されたバルク供給ではなく、給油所など小売り施設で燃料を直接購入することが多い点も、こうした複雑性を生じさせています。この結果、いわゆる「給油所問題(Gas Station Problem)」と呼ばれる一連の課題が生じます。これには、人的ミスによる誤給油のリスク、実質的に同一の燃料製品に複数のブランド名が存在すること、そして(同一ブランドであってもなお)原料のばらつきがあることが挙げられます。持続可能性証明(Proof of Sustainability:PoS/PoC)へのアクセス制約や標準化の欠如により、検証可能なデータを獲得することが難しくなり、会計・報告にあたっては、透明性、文書の厳格性および注意が一層求められます。
こうしたデータが準備された後、低排出トラック輸送の排出プロファイルに関する需要を成立させ・提示する下流の関係者は、入手可能なデータを読み解き、正確に報告する必要があります。キャリアと荷主では必要とするデータが異なりますが、陸運事業者や小規模企業が非常に多いため、基礎となる輸送活動や輸送データの報告(ISO 14083/GLECなど)に関する実務は依然としてばらつきがあり、紙の領収書や燃料カードで管理されることが多い煩雑な燃料データによってさらに複雑化しています。陸運モードにおいて、BEV(バッテリー式電気自動車)は望ましい独自のソリューションにつながりますが、データや報告の相違に適応していく過程において、特有の複雑性に直面しています。
本輸送モードのサプライチェーンは、複雑になりがちです。このような複雑性により、サプライヤーの比較や標準化が難しくなる場合があります。こうした点も、高い信頼性を備えたマーケットベースのアプローチが有効とされる理由の一つです。
こうしたギャップを解消し、一連のソリューションを促進するために、それぞれのレベルで実践が発展してきました。再度供給面から見ると、123Carbon、Shipzero、M‑RETs、TERCなどの様々なデジタルプラットフォーム(いわゆる「レジストリ」)が独立したブックアンドクレームシステムを運営・開発し、環境属性証明書(EAC)やソリューションへのアクセスを提供しています。一方で、キャリア、物流サービスプロバイダー(LSP)、および荷主は、自社内ソリューションの導入や実証的な取り組みを進めています。その内容は、単純なEACの提供から、ソリューションプロバイダーとの戦略的なパートナーシップや、オンサイトタンクの設置にまで及びます。GMA Truckingは、SFCとのパートナーシップの下、Book and Claimシステムを通じて、低炭素トラック輸送に係る環境属性の共同調達として初の取り組みを実施しています。荷主は、低排出輸送サービスを調達するにあたり、自社の標準作業手順書(SOP)や購買要件を整備してきました。これにより、多様な市場が構造化され、需要シグナルが洗練されてきました。最後に、第三者検証機関は、これらの多くのソリューションを下支えしており、気候関連開示の主張を有効にする上で不可欠な存在としての認識が一層高まっています。
ロードワーキンググループは、利用者がブックアンドクレームシステムの構築を進める中で、こうしたデータ面の課題を明らかにし、整合性を高めることを目的としています。今の段階で関係者間の連携を図ることが、最終的には、誤った二重計上、一貫性のない報告、グリーンウォッシングの回避につながります。このためには、ベストプラクティスの共有、一貫性のある方法論や相互運用可能なレジストリの構築、そして第三者検証の支持などについて、協調して取り組むことが不可欠です。ロードワーキンググループは、チェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)システムを適用して、関係者の取り組みを整合させていくにあたり、実践の共有を引き続き提唱します。この活動は、信頼を構築し、実社会における脱炭素化を前進させる上で極めて重要です。
本記事に記載されている見解は、2025年4月時点におけるブックアンドクレームコミュニティのロードワーキンググループの考え方を反映したものです。本グループは、荷主、物流サービスプロバイダー(LSP)、キャリア、ソリューションプロバイダー、市民社会の代表者など、多様なステークホルダーにより構成されています。陸運セクターにおけるブックアンドクレームのトピックは発展途上にあり、今後、時間の経過とともに見解が変化する可能性がある点にご留意ください。
ロードワーキンググループへの参加については、Secretariat@BookandClaimCommunity.org までご連絡ください。
私たちの多くは日常的にブックアンドクレームを扱っていますが、このトピックに初めて触れる、あるいはこれらのシステムに含まれる数多くの機微、用語、定義に難しさを感じる人々と話をする場面も少なくありません。以下の内容、ブックアンドクレームと、その多くの側面について、馴染みのない方々に説明する際の一助となるでしょう。
ブックアンドクレームコミュニティの参加企業のように、多くの大口貨物輸送サービス提供者やその顧客企業は、自社の輸送からの排出量削減を目指しています。しかしながら、現時点では低炭素燃料は従来型の燃料と比べて高価なため、多くの輸送サービス提供者にとって、低炭素燃料の購入は容易ではありません。
同時に、多くの顧客は、自社の気候変動に対する目標を達成するために、間接排出(スコープ3)を削減する方法を模索しています。一方、こうした顧客企業は通常、自ら低炭素輸送燃料を調達することはないため、気候変動に対する目標の達成に向けて、輸送の脱炭素化を支援するための代替手段を必要としています。ブックアンドクレームは、輸送サービスプロバイダーとその顧客の脱炭素への意欲を結び付けることで、価格プレミアムを補完し、低炭素輸送サービスの市場を加速させるための一つの手段となることが期待されています。
ブックアンドクレームシステムでは、物理的な燃料から環境属性が切り離され、証書として別途販売されます。(この証書は、環境属性証明書(Environmental Attribute Certificates:EAC)、ブックアンドクレームユニット(Book and Claim Units:BCU)、またはトークンといった名称で呼ばれます。)
環境属性および EACの定義については、FAQ をご参照ください。
EACを提供することで、低炭素型燃料やサービスへの投資の担い手が広がります。燃料の直接の調達者や、証書を購入し自社の排出インベントリにおいてその証書に紐づく排出削減の便益を主張できる輸送サービスの顧客も、投資の担い手に含まれます。
これらの証書からの資金は、低炭素燃料や低炭素サービスの価格プレミアムの解消を狙ったものであり、低炭素燃料や低炭素サービスへの需要シグナルを強化し、輸送の脱炭素化に直接的に貢献します。
低炭素燃料の生産者および輸送サービス提供者は、確立された認証スキームに基づき、まず環境属性の検証を行います。検証された環境属性は、その後、レジストリ上で環境属性証明書(EAC)として登録(book)され、輸送サービスの顧客企業に販売されます。環境属性が主張(claim)された後は、当該証書は無効化(retire)されるため、二重計上や、他の証書購入者による誤った主張はできません。認証スキーム、レジストリ、および二重計上に関しては、FAQをご参照ください。
さらに、ブックアンドクレームを長期間の購買契約と組み合わせる場合、証書の購入が確約されることは資金流入の確約を意味するため、需要シグナルは一層強力なものとなります。燃料およびサービス提供者は、その事業が融資に値することを金融機関に示すことが可能となり、事業運営や生産規模の拡大に必要な資金の確保につながります。
最終的に、ブックアンドクレームは、低炭素燃料の生産を直接支援できる顧客層を拡大することで、輸送の排出削減への手段を拡張します。
以上で、物流の専門家に対しても、専門知識を持たない人に対しても、強力な輸送の脱炭素化のためのツールとしての「ブックアンドクレーム」を説明する準備が整いました。
2024年6月、Book and Claim Communityは「Principles and Best Practices for Book and Claim Systems in Heavy Transport」を発行しました。多様な専門家との協議を経て作成された本書は、業界の脱炭素化に向けた成功事例と課題をもとに、主要原則とベストプラクティスを提示しています。
商船三井はガバニングボードの一社として、日本企業向けに日本語版を制作。ステークホルダーと連携し、輸送の脱炭素化に貢献していきます。
ダウンロードフォームはこちら
本用語集は、Book and Claim Communityが作成し、商船三井が日本語訳に携わった「大口貨物輸送におけるブックアンドクレームシステムの原則とベストプラクティス(原題:Principles & Best Practices for Book and Claim in Heavy Transport)」より抜粋したものです。
「大口貨物輸送におけるブックアンドクレームシステムの原則とベストプラクティス」のダウンロードはこちら
「Principles & Best Practices for Book and Claim in Heavy Transport」のダウンロードはこちら ※外部サイトへ移動します。
なお、本用語集における「本書」とは、抜粋元である「大口貨物輸送におけるブックアンドクレームシステムの原則とベストプラクティス」を指します。
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追加性 (Additionality) |
ある介入(例:証書購入)に関連する排出削減または排出プロファイルが、その介入がなかった場合に発生したかどうかを評価する指標。特に、規制上の追加性は、その活動が既に規制上の義務によって要求されており、規制上の義務に向けて使用されているかどうかを評価する。 |
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監査人 (Auditor) |
本書全体で、監査人は適合性評価機関を指すために使用されており、これは認証機関及び妥当性確認/検証機関の両方を含む。具体的には、適合性評価機関とは、主張を提供する組織から独立しており、その主張に関して利用者としての利害関係を持たず(すなわち第三者)、特定の基準に対して認証するために認定されている機関を指す。 |
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ベストプラクティス (Best Practice) |
ステークホルダーが、対応する原則に沿うために採用することが推奨される行動またはアプローチ。本書で提供されるベストプラクティスは、今日において優勢なアプローチのスナップショットを提供する。新しいベストプラクティスのアプローチや方法は、時間の経過とともに出現し、発展していく。ブックアンドクレームシステムもそれらのニーズに対応し、進化していくだろう。 |
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ブックアンドクレーム (Book and Claim) |
環境属性を、通常それらの属性を直接持つ物理的な製品やサービスから切り離すことを可能にするチェーン・オブ・カストディ(加工流通過程の管理)モデル。物理的な製品やサービスから切り離された証書が作成されることで、物理的に脱炭素化された輸送サービスや燃料にアクセスできない買主が、大口貨物輸送の脱炭素化を経済的に支援し、またその便益を主張することを可能にする。 |
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ブックアンドクレームシステム (Book and Claim System) |
燃料または輸送サービスの提供者が生成した輸送製品及び/またはサービスの環境属性を「登録(book)」し、証書を作成することを可能にする市場インフラ(持続可能性認証システム、レジストリ、会計基準)。これにより、顧客は、気候関連情報開示のためにこれらの証書が示す排出削減の便益を「主張(claim)」することができる。 |
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証書 (Certificate) |
証書は、特定の量の低炭素燃料または輸送サービス(例:ニートSAFのメトリックトンまたはエネルギーのMJ)に関連する環境属性(主張を裏付ける、炭素強度・GHG 排出削減及びその他の持続可能性属性を含む)を表す。本書の目的のために、「証書」という用語を使用するが、一般的にはBCU(ブックアンドクレームユニット)、クレジットまたはトークンとも呼ばれる。 |
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認証 (Certification) |
認証とは、独立した認定監査人によって、確立された一連の基準に基づいて対象物(本書ではサプライチェーンの持続可能性)を、評価するプロセスである。 |
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二重計上 (Double Counting) |
ブックアンドクレームシステムにおける二重計上とは、誤った、重複した、または不適切な排出量削減会計を指し、二重発行(同一ソリューションで重複した証書を作成すること)、二重主張(複数の当事者が同一の証書を主張すること)、二重使用(複数の目的で同一の当事者によって同一の証書を繰り返し使用すること)の3つのシナリオを含む。 |
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環境属性(Environmental Attributes) |
エネルギー源やその他の活動の具体的な持続可能性の側面を表す特性。これらの属性には、炭素強度、GHG排出削減量、その他の持続可能性特性が含まれる。 |
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介入 (Intervention) |
低炭素燃料及び/または低炭素輸送サービスを生み出すために取られる行動で、証書の作成につながる。単一の介入によって、スコープ1及びスコープ3の両方の証書が作成される。 |
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原則 (Principle) |
すべての輸送モードにわたる大口貨物輸送サプライチェーンにおけるすべてのブックアンドクレームシステムに適用されるべき基本的な声明。すべての信頼性のあるブックアンドクレームシステムまたはインフラストラクチャの一部は、その有効性と完全性を維持するために、記載された原則に沿うべきである。 |
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レジストリ(Registry) |
特定の要件に従って整理及び維持される、文書化された情報またはデータの体系的な集合。 |
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持続可能性認証制度 (Sustainability Certification Schemes) |
持続可能性認証制度は、製品、サービス、またはプロセスの持続可能性パフォーマンス(本書では環境属性と呼ばれる)を評価し、確認するために設計された標準化されたフレームワークまたは方法論を指す。これらの制度は、通常、独立した組織または規制機関によって監督され、その制度に基づき事業者を認証する監査人を認定する。 |
ブックアンドクレームは強力な脱炭素化の手段ですが、私たちのツールボックスにある多くの手段のうちの一つに過ぎません。実際には、直接調達など、他のアプローチを優先すべき場面も数多く存在します。では、この点を踏まえ、ブックアンドクレームが適切な場合とそうでない場合をどのように判断すればよいのでしょうか。
これら4つの基準は、ブックアンドクレームが検討に値するかどうかを判断する際に有用です。
1. 新興市場の初期段階では、代替燃料の供給が制限されています。アクセス制約により燃料や低炭素サービスを直接購買できない場合、または、自社で低炭素商品を通常は直接調達していない場合に、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、出張に伴う排出量の削減を希望するけれども、ジェット燃料を直接購入しておらず、航空会社や物流サービスプロバイダー(LSP)と容易に連携できない場合、ブックアンドクレーム証書を購入し、排出量に対応することができます。
2. 市場が成長する一方、低炭素燃料や低炭素サービスはすべての地域で容易に利用できるとは限りません。また、排出量の観点からは、遠くにある低炭素燃料や、製造地の近くにある低炭素輸送機器を長距離輸送して使用することは必ずしも合理的とは言えません。自社の地域で低炭素製品や低炭素サービスを調達できない場合、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、持続可能な燃料(SAF)の利用拡大を目指しているものの、SAFを利用できる空港を定期的に利用していない航空会社の場合、排出量の一部に対応する手段として、ブックアンドクレーム証書の購入を検討してもよいでしょう。
3. サプライチェーンは長大かつ複雑なことが多く、末端のサプライチェーンパートナーを特定し、影響を及ぼすことは困難です。スコープ3の排出源がサプライチェーンの奥深くに存在し、対応が極めて難しい場合には、ブックアンドクレームはそのスコープ3の排出量への対応策として強力な選択肢となり得ます。
例えば、物流サービスプロバイダー(LSP)やキャリアにとって、荷動きが多い輸送ルートの中で、小売業者の特定の貨物を効率的に低排出トラック車両に振り分けることは、実務上困難な場合があります。結果として、追加コストが発生するだけでなく、排出量が増加する可能性もあります。このような場合に、ブックアンドクレーム方式は、LSPが効率的に脱炭素化を進めるための有力な手段となり得ます。
4. 脱炭素化に向けた移行では、多くの産業において新たな生産拠点の建設や既存設備の改修に多額の資本投資が必要となり、その結果、低炭素代替品の価格が上昇する可能性があります。ブックアンドクレーム証書の購入がそのコスト上乗せ分を直接補い、さらに、普及が進んだ段階で低炭素代替品と従来品の価格が均衡する方向へ業界を後押しできるのであれば、ブックアンドクレームは強力な選択肢となり得ます。
例えば、海運事業者が、将来の脱炭素化においてグリーンメタノールなど新たな技術が不可欠だと認識していても、前述の課題のいずれかに直面する場合があります。ブックアンドクレーム証書の活用により、企業はこうした新しい技術を現時点から支援することができます。
ブックアンドクレームの領域において、「一次データ」と「二次データ」という基本的な概念は重要ですが、見過ごされることの多いものです。最も熟練した実践者でさえ、予期せぬデータの不整合により混乱することがあります。例えば、「実測値を使用する」あるいは「データベースからデフォルト値を参照する」という言葉がよく聞かれますが、これらは何を意味しているのでしょうか。また、データについて他に議論の方法があるのでしょうか。以下に、一次データと二次データの違いを示します。
1. 一次データ
一次データとは、実測によって得られるプロセスや活動の定量的な値、または実測値に基づいて行われる計算を指します(ISO 14083:2023)。
一次データには、燃料の領収書のような明確な情報から、年間エネルギー消費量を反映した集計値まで、様々なデータが含まれます。一次データは、輸送サービスを提供する事業者や物流拠点を運営する事業者がスコープ1の温室効果ガス(GHG)排出量を算定する際、及びキャリアからスコープ3排出量算定のためにデータを収集する際に、推奨されるデータ形式です。
2. 二次データ
二次データとは、一次データ以外のすべてのデータを指し、さらに「モデル化データ」と「デフォルト値」に分類されます(詳細はISOリンク参照)。
3. モデル化データ
モデル化データとは、一次データ及び/または輸送活動や物流拠点の運営により生じるGHG排出量に関連する、パラメータを含むデータを指します。企業や排出量算定・報告ツールの提供者は、モデル化データを使用し、貨物、輸送経路の詳細、輸送機器情報、その他の要素といった利用可能な情報に基づいて、エネルギー消費量や排出量を推計します。モデル化データの精度は、利用可能な情報の詳細レベルや、モデル化時に設定された仮定に応じて異なります。
4. デフォルト値
より良いデータが入手できない場合には、デフォルト値を使用します。
デフォルト値とは、業界で一般的に行われている運用から導かれた指標であり、排出量の大まかな目安を示します。また、排出の多い箇所(ホットスポット)を明らかにするなど、特定の用途に役立つ場合もあります。ただし、デフォルト値は、計算の入力値として用いられる前提条件に本質的に依存しています。そのため、利用者にその前提条件を完全に提示し、理解を得ることが不可欠です。そうでない場合、不適切な適用による深刻なリスクが生じます。したがって、デフォルト値に依存すると不確実性が高まる可能性があります。ブックアンドクレームコミュニティでは、使用するデフォルト値の出所を明示することや、パートナーと協力してより具体的な情報を収集することが重要だと認識しています。こうした取り組みによって、全体の精度を高めることができるでしょう。
最終的に、ブックアンドクレームを用いたサービスを評価、提供する際には、自社データの把握が不可欠です。バリューチェーンの主張を裏付ける排出量計算では一次データの使用が望ましいとされていますが、実際には異なる種類のデータを組み合わせる必要があることが認識されています。
2024年6月、Book and Claim Communityは「Principles and Best Practices for Book and Claim Systems in Heavy Transport」を発行しました。多様な専門家との協議を経て作成された本書は、業界の脱炭素化に向けた成功事例と課題をもとに、主要原則とベストプラクティスを提示しています。
商船三井はガバニングボードの一社として、日本企業向けに日本語版を制作。ステークホルダーと連携し、輸送の脱炭素化に貢献していきます。
以下の記事について、お手元で閲覧しやすいダウンロード資料としてまとめました。ぜひご活用ください。