2024年12月13日
商船三井は2024年11月11日~22日にアゼルバイジャン共和国・バクーで開催された「国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)」に参加しました。
各社・各団体が主催した様々なイベントに当社チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)の渡邉が登壇したことに加え、COP29に合わせて発表された複数の声明・レターに賛同しました。
CSuOの渡邉の登壇を中心に、当社がCOP29で見せた脱炭素化への強いコミットメントをご紹介します。
当社のCOPへの参加は、昨年2023年にドバイで開催されたCOP28に続き2回目となります。
当社は、海運業界の脱炭素化を先導する"First Mover"として、地球環境の保護と持続可能な未来の実現に向けた取り組みを続けてきました。 その取り組みは、クリーンエネルギーの導入、ウインドチャレンジャーに代表される運航効率の向上、Carbon Dioxide Removal(CDR、大気中の二酸化炭素除去)の推進など、多岐にわたります。
COP29は気候変動に対する世界的な意識と行動を促進するための重要なプラットフォームであり、そのような場で当社が脱炭素化へのコミットメントを示すことは、持続可能な社会の実現に貢献していく決意を改めて示す絶好の機会となりました。
COP29では、当社渡邉が複数のイベントで講演を行いました。ここでは、プレスリリースではご紹介しきれなかった渡邉の発言要旨をご紹介します。
まず、以下2つのセッションでは、国際海事機関(IMO)の中長期対策が海運業界に与える影響や、当社の脱炭素に向けた取り組みについて説明し、クリーンエネルギーへの投資を加速させるための政策・規制について参加者と議論しました。
① Making clean industrial projects bankable – the need for demand-stimulation policies (11/14、Industrial Transition Accelerator ・Breakthrough Agendaが主催)
直前のプレゼンテーションで「海上輸送の脱炭素化に伴う燃料費は480%の増加が見込まれる」とのレポートが紹介されたが、社会全体でその負担を分担することにより、最終的な末端価格上昇は1%に抑えられるとされている。このように負担分担の仕組みが整備されれば、海運業界としてクリーンエネルギーのオフテイクが進み、脱炭素化は実現可能となるだろう。IMOが2027年に導入を目指している規制・枠組みが、従来の燃料と脱炭素燃料の価格差を埋めるきっかけとなることで、こうした仕組みが整備されることを期待している。
② Accelerating the deployment of E-fuels and the decarbonizing of hard-to-abate sectors (11/15、Green Power Denmark が主催)
当社は、First Mover Coalitionに加盟しており、燃料の転換、効率的な運航、風力推進装置を通じて業界に貢献する。来年のMEPCでのIMOの新規制が燃料の価格差を埋め、First Moverとしての活動をさらに促進することが期待される。脱炭素燃料の導入においては、地理的要因も考慮する必要がある。当社は多様な船舶を運航しており、バンカリングハブでの補給が可能であれば、ビジネスに与える影響は最小限に抑えられる。また、船員の安全と福祉を考慮しながら導入を進めていく必要がある。
また、海運業界や日本企業としてCDR(大気中の二酸化炭素除去)に取り組む意義も説明しています。
③ Unlocking Net-Zero: The Role of Carbon Dioxide Removals
(11/15、NextGen主催)
当社はクリーンエネルギーや風力推進デバイスを活用して脱炭素化を進めるが、すべての船でゼロエミッションは難しく、CDRを活用する。NextGenではクレジット購入とCDR技術の知見獲得を目指す。MOLはCDRが必要なセクターでほぼ唯一の参加者で、他のCDR購入者が増えることを期待する。
さらに、米国を代表するメディアTIME誌が主催する、国際機関、各国企業などが集まった夕食会“TIME100 COP29 Impact Dinner”においても、今後の温暖化対策について当社CSuOの渡邉がスピーチを行いました。当社以外にはFortescueのCEO、米国エネルギー省のChief Commercialization Officer、コロンビアの環境大臣等が登壇する中、渡邉からは、海運業界の脱炭素化に向けて、幅広い業界とパートナーシップを通じて取組むことを強調しました。
COP29において、当社は以下の声明とレターに賛同し、脱炭素化に向けた明確な立場を表明しました。
①Alliance of CEO Climate Leaders COP29 Open Letter
世界経済フォーラムが主導して作成されたCOP29に向けたオープンレターでは、100社以上のCEOやリーダーが各国政府に対し、気候変動対策を強化するよう呼びかけています。当社は社長の橋本の名前で賛同し、各国が野心的で投資可能な国別貢献(Nationally Determined Contributions: NDCs)を開発し、気候資金を拡大し、化石燃料補助金を段階的に廃止することを求めています。100社を超える企業が賛同も、邦船社の賛同は当社のみとなります。
②Call to Action “Green Hydrogen and Green Shipping”
海運業界や荷主、エネルギー生産者等の50以上のリーダーたちが、COP29でゼロ・エミッション燃料の採用を加速するための行動呼びかけに署名しました。RMI、国連“Climate Change High-Level Champions”、UCL Energy Institute、国連財団によって組織されたこの行動呼びかけは、ゼロ・エミッション燃料の導入を通じた脱炭素化への投資を求める内容です。
共同声明では、ゼロ・エミッション燃料の取り組みを加速し、ゼロ・エミッション船への投資を増やし、グリーン水素インフラの全世界的な開発を行うこと等、迅速で大胆な行動を求めています。
今回のCOP29は、途上国の地球温暖化対策の資金調達が最大の焦点となる中、会議初日の首脳級会合には、米大統領選やG20の日程が近接した事で日本、中国、欧米を含む先進国の首脳が参加を見送ったため、報道では昨年より低調な印象を受けましたが、実際には約7万人と昨年に次ぐ2番目の参加人数の多さで、現地に行ってみると会場内は活気に満ちあふれておりました。中でもメインテーマが「ファイナンス」となったことで先進国は控え目な立場であったのと対照的に、グローバルサウス、中国を含むアジア、ロシアからの参加者が目立ちました。
COPの見所の一つでもあるパビリオンエリアでは、各国政府や国際組織による革新的な技術や実績の展示・発信にとどまらず、インタラクティブなセッションも随時開催され、活発な議論が繰り広げられておりました。気候変動対策にかける熱意を感じると共に来場者とのエンゲージメントの場としても活用されているのが印象的でした。
COP29の開催地となったアゼルバイジャン共和国は、東ヨーロッパと西アジアの境界に位置する内陸国で周辺国はロシア、トルコ、アルメニア、イランと政治的に不安定な国々である一方で、豊富な化石燃料資源に支えられながら安定的に経済成長を続けております。首都バクーの街並みは建物や道路も美しく整備されており、エネルギー輸出により同国の政治的・経済的繁栄がもたらされていると実感いたしました。
次回のCOP30はブラジル北部のベレンで開催される予定です。
記事投稿者:商船三井 コーポレートマーケティング部
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