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COP28に参加しました!@ドバイ

  • 環境負荷低減
  • 海運全般

2023年12月21日

 2023年11月30日から12月12日にかけてCOP28がUAE(アラブ首長国連邦)のドバイで開催され、当社は海運企業唯一、環境省が主催するジャパンパビリオンへ出展しました。本ブログではCOPの概要紹介と実際にドバイに出張した当社社員によるレポートをお届けします。

いまさら聞けないCOPとは?

 COP28には岸田総理をはじめ、各国の首脳や国連関係者、企業のリーダー等が参加したことから、関連ニュースを目にする機会があったかと思いますが、COPがどのような目的で開催されているのか詳しくご存じでしょうか?
そこで、まずCOPの概要や経緯について説明します。

COPとは「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」と訳されます。「締約国会議」はある条約や議定書を批准した国が集まる会議であるため、世界にはさまざまな「締約国会議」が存在しています。その中でもよく「COP」として報道されているのが、今回開催された気候変動に関する国際会議であり、COP28は「気候変動枠組条約締結国会議」の第28回目を表します。ちなみに第1回目 (COP1) はベルリンで開催されました。
COPは約2週間にわたって開催され、首相級・閣僚級の会合の他、個別のテーマについての議論が行われます。また各国の政府、学者、NGO、ビジネスリーダーなど、さまざまなステークホルダーが参加し、多様なテーマに関するイベントやセッションが行われ、気候変動に関する最新の情報交換や、議論が行われます。

COP28のDailyAgenda一覧

COP28のDaily Agenda一覧。2週間にわたり上記テーマについて議論が実施される。

COPは、1992年に大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標とする「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」が採択され、世界は地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいくことに合意した事から始まっています。気候変動問題という国境の無い問題の解決には、地球規模での対処が必要であり、多国間での合意形成を進める場であるCOPは非常に大きな役割を果たしています。

日本で行われたCOP3で採択された先進国の排出削減について法的拘束力のある数値目標などを定めた「京都議定書」や、フランス・パリ開催のCOP21で採択された「パリ協定」があります。パリ協定は、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとして、世界共通の長期目標として2℃目標の設定、1.5℃に抑える努力を追求することを定めたもので、気候変動対策の転換点として注目されました。
ドバイで開催されたCOP28の概要は以下のようになっており、パリ協定で定めた気候変動に対する各目標における進捗状況を5年ごとに包括的に評価する「グローバル・ストックテイク(GST)」を初めて実施することや、化石燃料の削減に向けた協議が注目ポイントとなっていました。

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COP28の概要と主要テーマ(JETRO資料をもとに作成)

化石燃料からの転換を加速、再生可能エネルギーを2030年までに現状の3倍へ

COP28では、化石燃料からの転換を加速し、再生可能エネルギーを2030年までに現状の3倍に拡大することを盛り込んだ成果文書が採択されました。そして、今回のCOPで注目されていた化石燃料の廃止については脱却という表現に変更となったものの、化石燃料の使用を減らす方向性を明確に打ち出したことで脱炭素社会実現に向けた大きな一歩を踏み出したと言えます。また2050年までに温室効果ガス (GHG) 排出を実質ゼロにするための施策として、2020年代に科学的知見に基づく公正な方法でエネルギーシステムから化石燃料からの転換を加速することや具体的な年限を設けて、2030年までに化石燃料から再生可能エネルギーへの脱却を促す文言も含まれています。それに加えて、地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、2035年に2019年比で60%の温室効果ガスを減らすことが必要であると記されています。

船舶における風力活用技術、ウインドチャレンジャー・ウインドハンターを世界に向けて発信

環境省は日本の優れた製品・サービスと気候変動に対する取組を世界に向けて発信するため、COP28開催に合わせ、展示やサイドイベントを実施する「ジャパン・パビリオン」を設置しました。パビリオンにおける展示物として、日本の気候変動対策の長期目標である「2050年カーボンニュートラル」の実現と世界の脱炭素化、又は気候変動適応を支える製品・サービスとして、当社はCOP28ジャパンパビリオンにおいて船舶における風力活用技術と題して、次世代風力推進帆「ウインドチャレンジャー」・グリーン水素生産船「ウインドハンター」の展示を実施しました。
ウインドチャレンジャーは可変式の硬翼帆で、この帆を活用することで再生可能エネルギーである風力を船の推進力としてプラスし、スピードを変えることなく、化石燃料の使用量とGHGの排出を抑えることができます。ウインドハンターはグリーン水素生産船であり、風力を推進力として利用するだけでなく、船舶上で風から生産したグリーン水素を消費地まで輸送することを可能とする次世代船型プロジェクトです。詳しくは上記リンクをご覧ください。

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当社の展示ブース(写真左)、ジャパンパビリオンの様子(写真右)
ジャパンパビリオンは青を基調としたデザインで構成されており、建物の左半分が展示スペース、右半分が日本政府関係者主催のセミナースペースとなっています。(参照:JETRO)

COP会場の様子

 COP28の会場はDubai Expoという2020年ドバイ万博の会場を再利用した場所で開催されました。会場は「ブルーゾーン」と呼ばれる国連管理エリアと「グリーンゾーン」と呼ばれる開催国政府が管理するエリアの2つに分かれており、グリーンゾーンでは気候変動に関するイベントや、展示、ワークショップなどが行われ、登録した一般の参加も可能です。ジャパンパビリオンはブルーゾーンエリアに位置し、他の参加国のパビリオンも同じくブルーゾーンにあります。

COP参加者は会場に入る前に窓口で参加者登録を行う必要がありますが、7万人以上の参加が見込まれていたこともあり、登録待ちの列に並んでから登録が完了するまで1時間以上かかる大盛況ぶりでした。また参加者向けにタンブラーやCOP期間中のメトロ無料パスの他、熱中症対策として無料の水が配布されていました。

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会場で配布されたタンブラーとメトロパス(左)、会場内の様子(右) (画像:筆者撮影)

ちなみにDubai Expoはブルー・グリーンゾーン合わせて438ヘクタールと、東京ドーム(4.7ヘクタール)の約90倍!以上の広さを誇っており、歩いて回ると時間がかかることから会場内の道路には参加者をそれぞれの目的地まで運ぶ専用の車や電動スクーターが設置されていました。筆者も隙間時間にグリーンゾーンの展示を歩いて見学しましたが、ホテルに戻って歩数計を確認するとなんと2万歩以上歩いていました。

またパビリオンの展示のほかにも、サイドイベントとして産業エネルギー転換、脱炭素政策、再生可能エネルギーなど多岐にわたるテーマのパネルディスカッション/ワークショップがブルーゾーン内で毎日開催されており、ドバイの気温をも上回る熱気にあふれた議論を肌で感じる事が出来ました。

Blue Zone Side Event & Saudi Green Initiative-1

ブルーゾーンでのサイドイベント(写真右)、Saudi Green Initiative(写真右)
(画像:筆者撮影)
グリーンゾーンにあるSaudi Green Initiativeではサウジアラビアが環境問題解決に向けて実施している取り組みや未来構想について展示していました。(建物からインパクトがありますね!)

COP28を終えて

 COP28では、ジャパンパビリオンでの展示を通して世界各地の企業、公的機関、政治家、学生の方など様々なバックグラウンドを持つ方に訪問いただき、普段海運業界と接点がない方にも、当社の環境に対する先進的な取り組みを知っていただく機会となりました。
また、多数のパビリオン来訪者や様々な関係者の方から、帆や船の構造から当社のサービスが環境に与えるインパクトにいたるまで幅広いご質問や感想をいただきました。こうした参加者とのコミュニケーションを通して、当社の取り組みに対して大きな関心を持っていただけたことを大変嬉しく思います。
海運業界は、2022年時点で全世界のCO2排出量の約2%を占め、他の産業と同様にCO2排出削減が求められております。IMO(国際海事機関)が2050年頃までに船舶のCO2排出を実質的にゼロにすることを目標として掲げるなど、脱炭素の潮流は加速しています。
当社は脱炭素社会と豊かな未来の実現に貢献できるよう、従来の海上輸送サービスに加え、省エネデバイスやクリーン代替燃料の導入等に取り組み、2050年までのネットゼロ・エミッション達成に向けて、ひとつひとつ着実に進めてまいります。
またこの場を借りてCOP28およびジャパンパビリオンの開催に携わられた関係者の皆様に御礼申し上げます。

当社のCOP28における他の取り組み関してはこちらのリンクをご覧ください。

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Akihiro.Y

記事投稿者:Akihiro.Y

大学・大学院で環境経済学を専攻。新卒で商船三井に入社後、コーポレートマーケティング部に配属。マクロ経済情報のリサーチや全社の部門・地域横断的なマーケティングを担当しています。週末は釣りや野球観戦に出かけてリフレッシュしています。

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