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大型船の航路と速度を見てみよう

  • 海運全般

2022年06月28日

 

日本は天然資源のほとんどを輸入に頼っています。原油は中東から、鉄鉱石はオーストラリアやブラジルから、石炭はオーストラリアやインドネシアから日本各地の港まで貨物船で輸送されます。では、これらの貨物船は、それぞれの貨物の積み出し港から日本まで、どのような航路をどれくらいの時間をかけて航海しているのでしょうか? 今回は大型貨物船の航路と速度、航海日数についてご紹介します。

マイルとノット

船の世界では古くから距離の単位としてノーティカルマイル(海里、nautical mile)、速力の単位としてノット(knot)が使用されています。

これらは航海に都合の良い単位で、航海距離の1ノーティカルマイルは地球の緯度1分に相当します。つまり下図のとおり、北極から赤道までの距離の90分の1のさらに60分の11ノーティカルマイル(1852メートル)なのです。

マイルとノット

したがって、ある船が北半球で北に進路をとり、北極星の高さが1度上がるまで航海すると、その船の緯度は1度上がり、北に60マイル進んだことになります。

また航海速力の1ノットは1時間に1マイル進む速さに相当します。もし北に10ノットで進む船があれば、その船は6時間で緯度1度(60マイル相当)北上し、理論上は、その360倍の2160時間(90日)で地球を1周する計算になります。

*1 上記のノーティカルマイルと陸上で使用されるスタチュートマイル(陸里、Statute Mile)は異なる単位で、スタチュートマイルは1マイル1760ヤード(約1600メートル)です。

大圏航路と等角航路

米国西岸のロサンゼルスから東京までの航海を考えてみましょう。

この場合、ロサンゼルスと東京を最短距離で結ぶ航路を大圏航路(Great Circle、下図実線)、常に一定の方位を維持して航海する航路を等角航路(Rhumb Line、下図破線)と呼び、2点間の距離は大圏航路で約4800マイル、等角航路で約5100マイルとなります。

 

航海の所要時間を短縮するには大圏航路を進むのが望ましいのですが、大圏航路に沿って航海するためには航海の進捗に合わせ、船の進む方位を常に修正する必要があります。

陸地の全く見えない海上でも、緯度は北極星の高さで簡単に求められますが、経度の把握は非常に困難で、自船の位置を見誤ると太平洋上をさまようことになってしまいます。このため自船の位置を正確に把握することが難しかった時代には、羅針盤の示す方位を常に一定(この場合は約270度)に保って目的地に向かう等角航路が広く利用されていました。

現在ではGPS等によって自船の位置は簡単に把握出来ますので、この航路ではロサンゼルスを出港後、太平洋を北緯50度付近まで北上する大圏航路が一般的に利用されており、20ノットで航海するコンテナ船があれば、4800マイル÷20ノット=約240時間(10日)で東京に到着します。

*2 実際の航海では距離の他、気象・海象・潮流等、様々な要素を総合的に判断して最適な航路が選択されます。

原油輸送の場合 ~中東から日本まで~

中東から日本までの原油輸送、サウジアラビアのラス・タヌラ港から東京湾までの航海を考えてみましょう。

この場合2点間を大圏航路で結ぶことは出来ませんので、ペルシャ湾内のラス・タヌラ港で原油を積んだタンカーはホルムズ海峡を通過してインド洋に入り、マラッカ・シンガポール海峡を通過、太平洋を航海して東京湾に向かうことになります。

 

この航路の航海距離は約6600マイルですので、原油タンカーが14ノットで航海する場合、片道470時間(19.5日)前後が必要となります。実際、中東から輸入される原油の多くは、VLCCと呼ばれる大型原油タンカーによって、片道約20日間、貨物の積み揚げに要する時間も含め、1航海4550日をかけて輸送されます。

VLCC1航海で中東から持ち帰る30万トンの原油は、日本の石油需要の約12時間分に相当し、各地の製油所でガソリンをはじめとする様々な石油製品に精製されます。

VLCCの大きさについてはこちら、大型原油タンカーはどれくらい大型なの?

VLCC takner

鉄鉱石輸送 ~ブラジルから日本まで~

次に鉄の原料となる鉄鉱石をブラジルから日本まで輸送する航路を考えてみましょう。

日本から見るとブラジルはほぼ地球の反対側にあたりますので、ブラジルから日本へは、西向きに航海する、①パナマ運河経由、②ホーン岬経由、または東向きに航海する ③スエズ運河経由、④喜望峰経由 の4つの航路が考えられます。

 

 

航海距離はブラジルを出港後、パナマ運河を通過、日本まで大圏航路を進む①の航路が最も短いのですが、パナマ運河は通行できる船の大きさに制限があり、積載できる貨物の量が制限されること、運河の通行料が高額なものとなることから、鉄鉱石輸送においてこの航路が選択されることはありません。

また②のルートは、南アメリカの南端であるホーン岬と南極大陸の間に位置するドレーク海峡を通過する必要がありますが、ドレーク海峡は南緯55度を超えて位置し、1年を通じて吹き荒れる暴風、15メートルを超える高波、強い潮の流れもあって古くから航海の難所として知られており、この航路も一般的には選択されません。

ブラジルから東向きの航海を考える場合、③のスエズ運河を通行する航路も、パナマ運河と同様に、船の大きさの制限や通行料を考えれば経済的な航路とはなりません。

したがってブラジルから日本まで鉄鉱石を輸送する場合、一般的には④のアフリカ南端にある喜望峰を経由する航路が選択され、航海距離は片道12000マイル前後(13ノットで40日弱)という非常に長い航海となります。

貨物の積み揚げに要する日数も含め1往復に3ヶ月近くを要するこの航路では、輸送効率の向上を目指して船の大型化が進んでおり、一度に40万トン近くの鉄鉱石を運ぶことが出来るヴァーレマックスと呼ばれる超大型の鉄鋼石専用船も登場しています。

飛行機と船を比較してみると

貨物船の速度は気象・海象・潮流等の影響を強く受けること、また、航海の経済性によって意図的に増速させたり減速させたりすることもあり、一概に何ノットとは言えませんが、比較的船足の速いコンテナ船で20ノット(時速37km)前後、鉄鉱石や石油を運ぶ大型船では1215ノット(時速2228km)程度が一般的です。

一方、飛行機は船よりも圧倒的に高速で貨物を輸送できますが、貨物の積載量では船に敵いません。大型貨物機であるボーイング747-8フレイターの巡航速度は約560ノットですので、上記したサウジアラビア~東京間の所要時間は大圏航路(4500マイル)を利用して約8時間(60分の1)に短縮されます。しかし貨物機の最大貨物積載量は約140トン*3なので、輸送できる貨物はVLCC2000分の1に減ってしまいます。

*3 ボーイング社ウェブサイト参照。


ボーイング747-8 フレイターボーイング747-8フレイター(出典 Wikipedia)

したがって、貨物の輸送速度を求める場合は航空機、大量且つ低コスト輸送を求める場合は船が最も適切な輸送手段と言えます。商船三井では海上輸送はもとより、航空、陸上輸送も含め、様々な輸送モードでお客様のあらゆる輸送ニーズにこたえます。

商船三井グループの物流事業は、世界26ヵ国、123都市、239拠点にネットワークを展開し、商船三井ロジスティクス(株)、(株)宇徳、MOL Consolidation Serviceなど、グループ各社の特色ある機能を活かして、航空・海上・陸上輸送、通関、倉庫保管、検品、バイヤーズコンソリデーションなど、多様な物流サービスをお客様に提供しています。

https://www.mol.co.jp/services/logistics/index.html

 

MOL logistics

 

また商船三井では、重量物・大型貨物輸送における幅広いニーズに対応するため、2015年に統一ブランド “MOL Project & Heavy Cargo (PHC)”を立ち上げました。各種船型を網羅した最適輸送のみならず、バンニングや沿岸・陸上輸送、通関、据付を含めたワンストップサービスを提供しています。

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