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大型タンカーはどれくらい大型なの?

  • エネルギー

2021年03月10日

世界ではコンテナ、自動車、鉄鉱石、石油、石炭等、様々な貨物が海上輸送を通じて運ばれています。その総量は年間約120億トンで、その概ね25%が石油(原油やガソリンなどの石油製品)です。石油輸送のなかでは、中東をはじめとする産油国から世界各地の製油所に向かう原油(Crude Oil)の荷動きが約70%を占め、その多くはVLCC(Very Large Crude Carrier)と呼ばれる大型タンカーによって輸送されます。今回はそのVLCCの大きさや積載できる原油の量についてご紹介します。

原油の単位「バレル」

よく報道で「昨日の原油先物価格は1バレルあたり○○ドルでした」というニュースに接します。どうして原油の取引には「トン」でも「リットル」でもなく「バレル」という単位が用いられるのでしょうか?
「バレル」はアメリカで石油産業が誕生して間もない1860年代、ペンシルバニア州の石油生産者が原油の出荷に、当時一般的に使用されていた酒、魚、糖蜜などを詰める木製の樽「バレル」を利用したことが起源と言われています。原油の流通が始まった当初は、容量の違う様々な樽が原油輸送に利用されましたが、1866年には樽の容量が42ガロン(約159リットル)に統一され、150年以上を経た現在でも原油の取引単位として「バレル」が一般的に使用されているのです。

一般的な家庭用のユニットバスの浴槽にお湯をいっぱいに張ると200~250リットルですので、浴槽に7分目前後の容量が1バレルに相当します。この1バレルの原油が日々のニュースで伝えられるとおり、時として100ドルを超える高値で取引されたり、買い手がつかない時はマイナス価格になったりするのです。

原油の単位 1バレルの量(左:原油価格の推移。バレル当たりの価格で表示される。右:1バレルの目安)

VLCC1隻で運べる原油の量

では、大型原油タンカーであるVLCCは、1度にどれくらいの量の原油を運べるのでしょうか?
もちろん船によってタンクの大きさは異なりますが、最近建造された多くのVLCCは約200万バレルの原油を積み込むことが出来る設計になっています。東京ドームの容積が780万バレル(124万立方メートル)ですので、VLCCに積まれた原油4隻分で東京ドームがいっぱいになります。原油の比重は産地によって様々ですが、200万バレルの原油は重量にすると約30万トンです。
また、2021年2月現在の原油価格は1バレル60ドル程度ですので、VLCCに満載された原油の価値は約1.2億ドル(約130億円)となります。

VLCCの積める量 東京ドーム(780万バレル) VLCCに4隻分相当

2020年にはコロナ禍によってVLCCが原油の洋上タンクとしても使用されました。
詳しくはこちら:                                                  「コロナ禍でタンカーマーケットが急騰した理由」

VLCC1隻分の原油は日本の需要の何日分?

日本で消費する多くの原油は中東から片道12,000キロ、貨物の積み揚げに要する時間も含め1航海45~50日をかけて輸入されます。現在の日本の原油輸入量は1日当たり約300万バレルですので、VLCCに満載された200万バレルの原油は日本の需要の16時間分(約0.6日)に相当します。つまり、我々が日々消費する石油製品を安定的に供給するためには、毎日1.5隻のVLCCが原油を積んで日本に戻ってくる必要があるのです。
輸入された原油は、各地の製油所で陸上のタンクに荷揚げされ、複雑な石油精製の過程を経て、ガソリン、軽油、ジェット燃料、灯油、ナフサ、LPGといった様々な石油製品となって全国に出荷、私たちの日々の生活に欠かせないエネルギーとなっています。

また、日本より多くの原油を輸入する中国や米国では、安定したエネルギー供給のためにさらに多くのタンカーが必要となっており、現在の世界のVLCCの隻数は凡そ800隻に達しています。

 

日本における1日あたりの原油輸入量

* 米国向けの原油輸送ではスエズマックスやアフラマックスと呼ばれる
VLCCより小型のタンカーも多く使用されます。

VLCCの全長は東京タワーと同じ

VLCCの一般的な全長は約330mで東京タワーや東京駅とほぼ同じ、船体の幅は約60mで甲板の大きさはサッカーフィールドを縦に3面並べた大きさとほぼ同じです。船の底からマストの先端までは約65m(18階建てビルに相当)、また、貨物を満載した時の喫水(水面から船底までの深さ)は20mを超えます。

VLCCの大きさ 一般的な全長は約330mで東京タワーと同じ

VLCCはその大きさ故、港の岸壁に直接着桟することは少なく、多くの場合は陸地から遠く離れた沖合の係留施設に繋がれ、陸上の石油タンクとはパイプラインを通じて貨物の積み揚げを行います。下の写真は千葉県袖ケ浦市沖合の東京湾に設置された「京葉シーバース」で、年間延べ150隻のVLCCが寄港し、海底パイプラインで接続された東京湾岸の4つの製油所に原油を供給しています。

VLCCが京葉シーバースに着岸している様子(VLCCが京葉シーバースに着岸している様子。本船から荷揚げされた原油は、海底パイプライン
を通じ陸側タンクへ運ばれます)

船体のダブルハル構造と貨物の積み下ろし

船体の外板(船舶の一番外側で海に面する部分)は、万一の座礁や衝突等の場合でも原油の流出を起こさないよう二重化(ダブルハル構造)されています。下図水色の部分がバラストタンク(本船のバランスを調整するための海水=バラスト水を積載するタンク)、緑色の部分が実際に原油を積載する貨物タンクで、外板が損傷した場合も、原油を海に流出させない構造になっています。

船体の内部は通常17個のタンクに仕切られており、複数の種類の原油を同時に積み込むことが可能です。一般的に、貨物は、陸上のタンクと船のタンクをパイプラインとホースで接続し、積み地では陸上のポンプを使用して船に原油を積み込み、揚げ地では船のポンプを使って陸上のタンクに原油を荷揚げします。VLCCは揚げ荷役用のポンプ(カーゴポンプ)を3基備えており、1基あたり1時間に3.5万バレル(5,500立方メートル)程度の貨物を荷揚げする能力があります。オリンピックサイズのプール(50x25x2メートル)に蓄えられた原油であれば30分足らずで吸い上げてしまいます。

ダブルハル構造。船体中央の貨物タンク(緑色部分)が二重の外板で保護されている。

(ダブルハル構造。船体中央の貨物タンク(緑色部分)が二重の外板で保護されている。)

VLCCの巨大なエンジン

大型船舶であるVLCCの推進力を生み出すメインエンジンは、6気筒または7気筒の2サイクルディーゼルエンジンで、自動車やトラックのエンジンとは比べ物にならない巨大な構造物です。
エンジンのピストンの直径(ボア)は800ミリメートル、ストロークは3メートルを超えます。エンジンの排気量は1万リットル、出力は最大3.8万馬力、プロペラを毎分70~80回転させ、約15ノット(時速約28キロメートル)の速力を発生します。

大型商船のエンジンの一例

(大型商船のエンジンの一例。VLCCのエンジンは更に大きい)

タンカーの大型化の歴史

タンカーの大型化による原油輸送の効率化を目指して、1960年代にはじめてVLCCが誕生して以降、その船型は50年以上をかけて現在の大きさに落ち着きました。
1970年代には更なる輸送コストの低減のため、ULCC(Ultra Large Crude Carrier)と呼ばれる超巨大タンカーが相次いで建造されました。それらの中でも1979年に竣工した世界最大のタンカー、ノック・ネヴィス(Knock Nevis)は全長458メートル、全幅69メートル、現在の一般的なVLCCの2倍にあたる4百万バレルを超す原油を積載することが出来る超巨大船でした。
しかし、これらのULCCはその巨大さゆえに入出港出来る港が限定されたこと、また、通行できる航路にも制限があったため、実際にはかえって運航効率の悪化を招きました。多くのULCCは特定の港に係留されて洋上タンクとして使用されることが多くなり、やがて老齢化したULCCは順次解体されました。
現在のVLCCは世界の主要港に入出港可能な汎用船型である積載容量2百万バレル(積載重量30万トン)が主流となっています。船は大きければ大きいほど良いというものではなく、それぞれに最適なサイズがあり、大型化には自ずと限界があるようです。

 

我々の生活を支える石油製品、その原料となる原油は言うまでもなく重要なエネルギーであることは変わりありませんが、昨今では、より低炭素で環境にやさしいLNG(液化天然ガス)の需要も増加しています。LNG供給の柔軟性や機動性が求められる中、FSRUはそれらを推進するソリューションとして注目されています。商船三井はVLCCをはじめとするタンカー船隊とともに、世界最大のLNG船事業者および国内企業として唯一のFSRUの保有・運営会社として、LNGの多様な調達を指向するお客様のニーズに沿ったFSRU事業を推進しています。

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たかひろん

記事投稿者:たかひろん

1991年入社。前世紀には鉄鉱石・石炭等のドライバルク輸送、今世紀に入ってからは原油・石油製品を輸送するタンカー部門、当社運航船向けの燃料調達業務を経験し、現在はマーケットリサーチに携わる50代男性。お腹周りの脂肪が目立つのは油っぽい業務を長く担当したせいか。。。

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