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中国から見る自動車新時代~現地駐在員がレポートする中国の自動車事情 (前編)~

  • 海運全般

2023年12月12日

回のBlogは久々の中国、上海より現地駐在員の生の声をお届けいたします!


我々商船三井自動車船部、いわゆるMOLACE (MOL Auto Carrier Express) は世界中の様々な航路で乗用車のみならずトラック、バス、建設機械など、多種多様な車両・貨物をお客様のため安全かつ迅速に輸送しておりますが、その中でも中国は近年成長著しい輸出地の一つに位置付けられております。
COVID-19拡大の折にはロックダウンなど厳しい情勢も経験しましたが、それを乗り越えて今や新エネルギー車 (New Energy Vehicle)、いわゆるNEV (註1) の大出荷地となった中国の自動車情報を2回に分けてお届けします。
第1回である今回は、中国国内の自動車事情について、ごく簡単な概要をお伝えしたいと思います。

(註1) 新エネルギー車 (NEV) とは、中国におけるプラグインハイブリッド車 (PHEV)、(バッテリ式) 電気自動車 (BEV)、燃料電池車 (FCEV)の総称。

中国ではどのぐらい車が走っているのか

2023年の6月末時点で4.2億台の車(トラック等も含む)が中国国内に存在していると言われています。
2020年まではアメリカが1位を守っていましたが、その後中国があっという間に抜き去り、世界TOPに躍り出ました。
なお、日本の自動車保有台数は約0.8億台(5月末時点)ですので、人口1人当たりの保有台数は日本の方が多くなりますが、中国の規模感が良くお分かりいただけるかと思います。
また、下のグラフは中国で生産された自動車がどのぐらい売れているのかを表したグラフです。

中国自動車販売台数
(データ:マークラインズより)

2019年以降はCOVID-19等の影響があり、なかなか2018年の水準には戻っていないものの、輸出分 (中国の生産・販売統計には輸出分も含む、約2-3百万台) を除いても毎年2千万台以上の車が売れているということを表しています(日本の年間販売台数は約4百万台)。

どのような車が売れているのか

2022年のメーカーグループごとの売り上げ実績は以下の通りです。

中国自動車販売台数 グループ毎(MOL調べ、合弁・輸出台数含む、万台)

中国でも様々な呼ばれ方をしていますが、三大自動車メーカーを上海汽車、第一汽車、東風汽車とし、そこに長安汽車、奇瑞汽車を加えて五大自動車メーカーと過去から呼ばれてきたようです。
1位の上海汽車は15年以上販売台数首位を維持していますし、第一汽車と東風汽車も少なくともここ数年は2位または3位の座を明け渡していません。
一方で、これら三大自動車メーカー以外の売上順位、規模、顔触れはここ近年激しく変わっており、4位の広州汽車はトヨタ・ホンダとの合弁事業や、自社NEVブランド埃安(AION)を軸に台数を増やしています。また、6位の比亜迪(BYD)は2021年以前は10位圏外の規模でしたが、2022年には前年比2倍以上の販売台数となり、中国はもとより海外も含めて急激にシェアを拡大しています。
全体的な構図としては、従来の伝統的な大規模自動車メーカーは引き続きその地位を維持しているものの、それ以外のメーカーも徐々に存在感を発揮し、シェアを少しずつ奪いつつある、という群雄割拠的な状況になっているように思えます。

また、以下は2022年のブランドごとの販売台数 (註2~4) を表したものです

中国ブランド別販売台数

(データ:マークラインズより)

(註2) VW・Audiは第一汽車・上海汽車合弁ブランド台数を含む。
(註3) トヨタは第一汽車・広州汽車合弁ブランド台数を含む。
(註4) ホンダは広州汽車・東風汽車合弁ブランド台数を含む。

1位はVW・Audiで、1980年代から中国でのビジネスを続け、強固な販売地盤を持っていることが伺えます。それを追うのがBYDというのが昨年との大きな違いでしょうか。上海汽車や広州汽車、第一汽車といったブランドが一つ前の表で触れたグループ販売台数と異なり少し下位に並んでいるのは、(註2~4)に記載した通りVWやトヨタ・ホンダといった合弁ブランドの販売台数を切り分けているためです。
このように、中国の自動車メーカーには濃淡あれど、自社ブランドをメインにしているところ(BYD、長安汽車など)と、合弁の割合が相応に多いところ(上海汽車、第一汽車など)があり、日本の事情とは大きく異なっています。

また、中国ではアリババや百度など、非自動車メーカーが合弁相手になることも多く、まだ販売規模は大きくないものの、各メーカーはそのような合弁会社を通じて新エネルギーやコネクテッド(常時ネット接続され、端末機能・車体常時監視・自動運転等機能をもつ)に特化した車両の製造に取り組んでいます。日本でも徐々にそのような取り組みが出てきてはいますが、やはり中国の取り組みは非常に素早くダイナミックなものがあります。

中国の車事情小ネタ

ずっと統計の話をしてきたので、今回は1回目ですし難しい話はここまでにして、中国の自動車関連雑学をお伝えしていきたいと思います。

中国でも当然のごとく免許が必要になり、18歳以上の人は基本的に教習所に行って (節約のため行かない人もいます) 、試験を受け、免許を取って運転することになります。
中国は左ハンドル・右側通行なので、日本とは完全に逆となっています。

さて、めでたく免許を取ったら車を手に入れるわけですが、既にお伝えしました通り、中国には多種多様な車の選択肢があります。
私もすべてを知っているわけではなく、まだまだ知らないメーカーがきっと存在するのだと思いますが、例えば上海汽車とGMと五菱汽車の合弁である上汽通用五菱汽車の「宏光 MINI EV」は2年以上中国での発売台数TOPを維持しており、その価格は発売当時為替で50万円台相当という超安値でした。一方で、第一汽車の最上級セダン紅旗L5というモデルは約8000万円から1億円相当と、国産ブランドだけでもこれだけの幅があります。
汽車の家(汽车之家)というサイトでは、中国で買える全ての車の価格等情報が見られますので、ご興味のある方は一度眺めてみてはいかがでしょうか。

車を手に入れると同時に必要なのがナンバープレートです。

IMG_3172 (加工済)

IMG_3176 (加工済)

(筆者撮影)

最初の1文字+アルファベット1文字が登録場所を表しています。特に最初の1文字は各都市の別称になっています。

主な都市・州 ナンバープレート 意味
上海市 沪(滬) 上海市の北東を流れる蘇州河の下流の呼称、または漁具の名前とも。
広東省 粤(越)

昔浙江省からベトナム北部にあった国の名前。

北京市 都、の意味。
天津市 渡し口(昔燕の国の天子が通ったため天津、となったとの)。
重慶市 重慶市内を流れる嘉陵江の古称「渝水」より。
河南省 豫 (予) 昔の豫州という地名由来とのことだが、文字通り古代にゾウがいたため、という説も。
雲南省 云(雲)

雲嶺という四川省との間にある山脈の南にあることから。

(筆者調べ、諸説あり)

すべての州に1文字の別称が存在しており、古来の地名や流れる川など、色々な由来があるそうなので、調べてみるのも面白いかもしれません。

写真にある緑のプレートはBEV (バッテリ式電気自動車) に与えられるもので、取得価格の減免等様々なメリットがあります。一方、それ以外は現在青プレートとなります(後述)。
青ナンバープレートは上記登録場所に加え、5桁の数字かアルファベット、NEVについては5桁の前にアルファベットが必ず付き、A~Dがついている場合はBEV、それ以外の場合はBEV以外ということになります。

上海では従来青ナンバープレートを取得する為に抽選+高額な支払い(百数十万円!!)が求められており、一方で緑ナンバーはタダで簡単に取得できました。
これにより自動車台数の急増の抑制と大気汚染の減少を図ったのです。大気汚染については現地の方に聞くと5年前に比べて圧倒的に改善したと口をそろえて仰います(COVID-19等の影響もあったのかもしれませんが)。その点でこの政策は一定程度有効だったものと思われます。
しかしながら、2023年1月からPHEVが緑ナンバーの対象から外れまして、BEVのみが緑ナンバー対象となりました。同時に車購入時の優遇政策も縮小されたこともあり、国内の販売台数に一定の影響を及ぼしているものと思います。

なお、まだPHEVであっても2022年以前に発行されたナンバープレートもあり、現在中国国内ではBEV以外の緑ナンバーも走っている状態です。

(おまけ)
①中国のタクシー

中国タクシー

運が良ければタクシーでもTeslaに乗れます。もちろん呼ぶのはアプリで

中国タクシー1

私も1度しか経験ありませんが、タクシーでBMWが来たことも。数百円で高級車に乗れるお得感。

②複数ナンバープレート

複数ナンバープレート (加工済)
(筆者撮影 於広州)

中国大陸から香港マカオ(逆も然り)に車で乗り入れるためには、両方のナンバープレートを持つ必要があります。
上の写真は香港用の黄色いナンバープレートと、国内用(陸続きの広東省)のナンバーを併せ持つタイプです。マカオの場合は黒いナンバーになります。
私はまだ見たことがありませんが、香港・マカオ・中国大陸すべてに入れるトリプルナンバーというものも存在している模様。

③バイクの扱い
クルマとは少し離れますが、中国ではバイクは電動が主流になっており、店に行けば5万円程度から買うことができます。特に上海は環境騒音の観点からほぼ電動以外認めない扱いをしており、日本のような普通のバイク(便宜的にオートバイ、とします)は超少数です。
そもそも通常のオートバイ自体が電動バイクに比べて圧倒的に高いという理由はありますが、最大の理由は車と同じくナンバープレートの値段です。上海のどこでも入れるAナンバーは最低500万円、1000万円するという話もあり、こういったオートバイに乗れるというのは一種のステータス的な扱いになっています(オートバイのプレートは今後新規発行されず、既存分のオークションのみ)。
私も月に1回ぐらいしオートバイの排気音を聞くことはなく、見かけるとお金持ちなんだなぁ、と思うものです。

IMG_3825 (加工済)(右の青ナンバーが電動バイク、真ん中の黄色ナンバーがオートバイ。"A"なので最高級。)


第一回では中国の自動車販売等の現状と、自動車に関する雑学小ネタを簡単に紹介させて頂きました。
次回は中国からの自動車輸出や今後の見通し等についてお伝えさせて頂こうと思います。
それでは次回もお楽しみに!

Shunichiro. F

記事投稿者:Shunichiro. F

新卒で銀行に入ったのち、2015年商船三井へ転職。法務に4年在籍後、MOLACEでアジア・大洋州の営業に従事。 2022年の7月にロックダウン明けの中国上海へ降り立ち、目まぐるしく移り変わる中国情勢と日々格闘中。 趣味は旅行で、写真はパラオの天然泥パック入江であるミルキーウェイにダイブしたときのもの。

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