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バイオ燃料を「使う」から「作る」へ。商船三井がガーナ・モザンビークから拓く脱炭素への新たな航路

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2026年05月25日

海運業界における脱炭素化は、「どんな燃料を使うか」だけでなく、「その燃料をどこで、どのように生み出すか」まで視野に入れる段階に入っています。商船三井グループは、バイオ燃料を既存船で活用するだけでなく、供給の上流にあたる“生産”の現場にまで踏み込むことで、持続可能な燃料循環モデルの構築に挑戦しています。
本記事では、MOL(Europe Africa)Ltd. モザンビーク・マプト事務所の支店長であるメルシオ・ゴエンハが、ガーナでの出会いを起点に、アフリカから広がるバイオ燃料の可能性を現地の視点で語ります。

 

キーポイント

  •  商船三井は燃料の利用にとどまらず、バイオ燃料の上流生産にも直接関与することで、脱炭素への取り組みを拡大
  •  ガーナおよびモザンビークでの経験が、アフリカにおける持続可能なバイオ燃料開発の可能性を示唆
  •  非食用原料であるジャトロファを、持続可能性と農村部の経済成長を支えるバイオ燃料原料として紹介
  •  国境を越えたパートナーシップにより、生産拠点・物流インフラ・将来の船舶燃料供給を結ぶ循環型バイオ燃料モデルを構築
  •  上流工程に踏み込むことで、商船三井は長期的な事業持続性を支えつつ、低炭素型海運への現実的な道筋を追求

アフリカの地でバイオ燃料の可能性を求めて―筆者がバイオ燃料事業に関心を持つに至った背景

MOL(Europe Africa)Ltd. マプト事務所 支店長
メルシオ・ゴエンハ(Mércio Goenha)

私は2022年に、モザンビークの首都にあるマプト事務所の最初の従業員として商船三井グループのMOL (Europe Africa) Ltd.に入社しました。 現在は、LNG船(LNGC)、FSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)、およびKARMOLプロジェクトを中心としたオフショア事業に関して、ロンドンと東京の本社をモニタリングおよび支援する業務を担当しています。

Maputo, Mozambique’s capital city on the Indian Ocean. Developed around its port, it is one of Southern Africa’s key urban centers.インド洋に面した港湾都市、モザンビークの首都マプト。港を中心に発展してきたこの街は、南部アフリカの重要な都市の一つです。

 

LNG市場として比較的新しい国でこのセクターを統括することは、私にとって非常に貴重な学習体験となりました。それと同時に、バイオディーゼルや物流といった新たな事業領域への可能性も切り拓かれました。 バイオディーゼルの開発は、よりクリーンな燃料源を開発するという商船三井の脱炭素化の取り組みに沿ったものです。 そのバリューチェーンが十分に理解されれば、ジェトロファ(ナンヨウアブラギリ)は、潜在的な競争力を備えた有力な燃料候補になり得ると考えています。

Jatropha (Jatropha curcas), a non-edible oilseed plant used for biofuels. Photos of its fruit and flowers appear later in this blog. (1)ジェトロファ(ナンヨウアブラギリ)は非食用植物の油分を原料に、バイオ燃料として活用されます。実と花の写真もブログ後半に掲載しています。(筆者撮影)


マプト事務所は、商船三井の事業開発戦略を現地から支える拠点として、南部アフリカ地域全体におけるさまざまな事業機会の把握や検討を担っています。こうした地域との関わりを広げていくことで、重要鉱物(クリティカルミネラル)の産出地域を含む分野においても商船三井の取り組みの幅が広がり、従来のコア事業にとどまらない事業ポートフォリオの形成につながっています。

Distribution of major mineral deposits and mining areas in Mozambiqueモザンビークにおける主要鉱物鉱床および鉱物産地の分布(出典: Federal Institute for Geosciences and Natural Resources (BGR), The Mining Sector in Mozambique, 2025※原典: S. Lächelt)

 

ジェトロファで繋がるパートナーシップ―直感から始まったガーナへの旅と、日本企業との出会い


2023年2月、私はバイオ燃料事業の転機となるガーナへの旅に出発しました。ほとんど直感に導かれるように始まったこの旅は、持続可能なエネルギー作物への冒険の始まりでもありました。
この冒険へと招待してくれたのは、日本の企業である日本植物燃料株式会社(NBF)です。同社は、非食用植物ジェトロファ(ナンヨウアブラギリ)を主に利用し、地域での再生可能エネルギーの生産と消費を結びつける独自のモデルを開発しています。NBFは2012年3月にモザンビークに現地法人Agro-business for Development of Mozambique Lda.(ADM)を設立し、2010年頃からジェトロファの契約栽培システムを開始しています。

なぜガーナなのか?—答えは一粒の種子にあった

私たちの目的地はガーナの首都アクラから400km離れた辺境の地でした。そこではある企業が2015年以来、ジェトロファに関する画期的な研究開発を行ってきました。多くのバイオ燃料事業が失敗に終わる中、その企業は遺伝的改良を重ね、1,267ヘクタール以上の「周縁地」(食用作物には不適だが、耐性のあるエネルギー植物には理想的な土地)を耕作してきました。

The cityscape of Accra, the capital of Ghana and a remote area in Ghana,

写真左:ガーナの首都アクラの市街地、右:筆者が訪れた、ガーナの首都アクラから約400km離れた地域(筆者撮影)

今回の訪問での大きな収穫は、極めて希少で高い耐性を持つジェトロファ種子の発見でした。
最新品種は種子重量が0.9グラム(従来の0.3グラムから増加)に達し、油分含有率は39%を誇ります。これは1ヘクタールあたりのバイオ燃料生産量を増やすだけでなく、飼料や肥料用のバイオマス増産も期待できます。そして現在、この技術を保有する唯一の企業は、この地でジェトロファを栽培しているNBFです。

Jatropha (Jatropha curcas) seeds and flowers.ジェトロファ(Jatropha curcas)の種子と花。種子1粒は通常長さ2cmほどで、油分を豊富に含んでいます。(出典: Wikimedia Commons, Ton Rulkens, CC BY-SA 2.0 / CC BY-SA 3.0

このモデルには、18のコミュニティにまたがる50の契約農家が含まれ、約300ヘクタールを栽培しています。ジェトロファは栽培にあたって労働時間が少なく(1日1.5時間)、農家は食用作物を並行して栽培でき、安定した収入と農村の生活を支えています。種子は1kgあたり0.17ドルで販売され、1ヘクタールあたり年間最大3.5トンを収穫できます。

バイオ燃料ブログ画像

ガーナからモザンビークへ —循環モデルの構築

現在、NBFはジェトロファ種子からのバイオ燃料の生産に注力し、船舶への燃料供給サービス提供を主な目標としています。同社はモザンビークのナンプラ州での生産開始や、ナカラ港での搾油施設設立を検討しています。


During a first joint visit with NBF, aboard a Civitas‐owned Floating Storage Unit (FSU) in Ghana筆者は2025年6月にNBFとの初の共同訪問として、ガーナにおいてCivitas社が保有する浮体式貯蔵設備(FSU)を視察。アフリカと日本を結ぶ循環型バイオ燃料サプライモデル構築に向けた重要な一歩となった。(筆者撮影)

この取り組みを実現するため、NBFは海洋燃料の浮体式貯蔵設備(FSU)を運営するCivitas(商船三井とKarpowershipの協業プロジェクトであるKARMOLの代理店)と協力しています。
初期試験は2026年に予定されており、現地生産が本格化する前にガーナから輸入したジェトロファ油を使用します。商船三井グループ内の協議や日本政府からの支援も視野に入れ、2027年頃から本格的な生産開始を見込んでいます。
今回の訪問は、事業性や技術面の確認にとどまらず、アフリカと日本をつなぐパートナーシップを改めて確かめる機会でもありました。NBFと歩んできたこれまでの積み重ねを土台に、この取り組みは今も次の段階へと進み続けています。

the team member

8時間のドライブの後、アクラの宿泊先に到着した際に撮影した一枚。滞在中は食事を共にし、親睦を深めた。右から:Dr. Yogendra Kumar Tripathi(研究開発責任者)、Mr. Uthama(プランテーション責任者)、小畑 亜季子氏(株式会社ユーグレナ)、Dr. Jiregna(農業技術責任者)、福島 充氏(商船三井)、合田 真氏(日本植物燃料株式会社/NBF)、 Mercio Goenha(商船三井)(筆者撮影)

持続可能な海上輸送を目指し燃料戦略の上流へ

 

商船三井グループでは、海上輸送における脱炭素化を現実的かつ着実な方法で推進しています。

なかでもバイオ燃料は、船舶の既存エンジンを改造することなく使用できるドロップイン燃料であり、低・脱炭素化を実現するための有効な選択肢です。商船三井はこれまでにも、シンガポールでの補油を通じて資源メジャーのAnglo AmericanBHPと共同でバイオ燃料による航行を実施し、着実な温室効果ガス(GHG)削減の実績を積み上げてきました(プレスリリース/プレスリリース)。さらに、将来的な需要拡大を見据え、中国最大手のSINOPECや丸紅と連携して長期的な供給・調達体制の構築にも着手しています(プレスリリース)。


Biofuel-powered voyage of the capesize bulk carrier LAMBERT MARU,

Anglo American向けに運航する商船三井所有のケープサイズバルカー”LAMBERT MARU”に、バイオ燃料を供給し航行を実施(出典:商船三井プレスリリース

本文でご紹介してきたアフリカにおけるジェトロファ事業は、商船三井が進めるグローバルな燃料戦略の一つとして、燃料の「利用」にとどまらず、その生産段階から関わる取り組みです。
ガーナやモザンビークで検討・推進している持続可能な燃料生産モデルは、現地の雇用創出や地域経済への貢献につながるだけでなく、2026年以降に予定されているバイオ燃料バンカリングサービスの実現に向けた土台づくりでもあります。
商船三井は今後も、代替燃料の導入や多様なパートナーとの協業を通じて、環境への配慮と事業の持続性を両立させながら、次の時代の海上輸送を見据えた取り組みを着実に進めてまいります。

 

著者プロフィール

MOL (Europe Africa) Ltd. マプト事務所 支店長

メルシオ・ゴエンハ (Mércio Goenha)

2022年商船三井グループMOL (Europe Africa) Ltd.に入社。 マプト事務所、最初の従業員。
仕事の傍ら、自然の中で過ごす時間を大切にしている。モザンビークは多様な自然環境と長い海岸線を有し、心身をリフレッシュするのに最適な場所が多くある。ザバラ湖は筆者のお気に入りの場所の一つである。

Mercio Goenha self photo2
MOLAfrica

ウェブサイト「MOLアフリカ」

 商船三井のアフリカに関連する事業と取り組みを特集したウェブサイト「MOLアフリカ」もぜひご訪問ください!

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 商船三井では、様々な代替燃料の船舶への導入・検討に注力しており、船舶からの温室効果ガス(GHG)排出削減を着実に推進しています。 

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