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【東アジア、東南アジア・大洋州地域代表 塩津 伸男】 本気、且つ、未来志向での「ぶつかり稽古」が組織を強くする。環境×地域×ポートフォリオ戦略によるBLUE ACTION2035実現への道 ~後編~

  • 海運全般

2023年09月20日

ドライバルク事業を中心にキャリアを重ね、現在では専務執行役員として東アジア地域、東南アジア・大洋州地域を担当する塩津 伸男氏。前編では東南アジア・大洋州地域での展望について伺いました。2000年代前半に中国・韓国の鉄鋼会社との長期契約を結んだことを皮切りに、国内では先駆けて東アジア地域でのビジネスを拡張してきた商船三井。後編では中国を中心とする東アジア地域での活動について、塩津氏にインタビューしました。

【東アジア】多面的な関係性を持つ、強いで結ばれたパートナー

―――東アジア地域は、商船三井にとってどのような位置づけを持つのでしょうか?

塩津

商船三井グループの経営計画であるBLUE ACTION 2035では、世界を6つに分けてそれぞれの地域戦略を定めています。東アジア地域はそのうちの1つですが、当社のビジネスに欠かせない重要なエリアであることは間違いありません。中国・台湾・香港・韓国で構成されており、いずれも有史以来日本との交流が活発で、文化的な背景も近いエリアです。それゆえ争いもありますが、交流促進を意識しながら当社が活動していくことで、地域と企業活動を両軸で発展させていきたいと考えています。


 

―――東アジア地域での既存事業について教えてください。

塩津

東アジア地域はこの20~30年の間に爆発的な経済成長を遂げました。特に中国において、当社は鉄鉱石の輸入を中心に事業を広げていきましたが、その他にも原油、LNGなどのエネルギー輸送も大きなシェアを占めています。また自動車関連の輸送も多く、近年では電気自動車など先進的な製品の輸出が盛んです。最近では世界的な流れの中で、東アジア地域でも脱炭素化の機運が高まっています。たとえば鉄鋼関係の事業などで当社の技術力を活かし、各国のCO2削減に貢献することで顧客との深い結びつきをさらに強化していきます。

商船三井 暮らしと産業を支えるいろいろな船私たちの暮らしや産業に必要なモノが、どのような船で運ばれているのか、
商船の構造、特徴などを紹介します。

 

また、他の地域と異なる大きな特徴として、造船業での協業が挙げられます。私は日本の造船業に大きな期待を寄せているのですが、韓国・中国も造船業に大変力を入れている国です。東京本社の技術部、営業本部とともに韓国・中国の組織のメンバーが現地のパートナーとタッグを組み、よりハイクオリティな船づくりに邁進しています。現在当社で使う大型のバルク船やタンカー、LNG船などの船舶は韓国・中国製のものも多く、切っても切り離せない存在になっています。

total vessel delivers by region(DWT)

 

洋上風力発電をはじめ、新たなビジネスの可能性を探る

―――では、海運以外の新しいビジネスについてはいかがでしょうか?

塩津

既存事業から派生し、BLUE ACTION 2035の方向性に合致する新たな事業開拓にも積極的に取り組んでいます。

たとえば台湾の洋上風力発電。台湾の海運会社と組んで新造したアジア初のSOVは、台湾最大規模の洋上風力発電所「大彰化」のメンテナンス支援に従事しています。また北陸電力や東邦ガスといった国内の事業者と合同で、洋上風力発電への上流投資も行っています。


洋上風力発電は韓国でも最近注目を集めている分野です。韓国では2019年に「グリーン・ニューディール」計画を発表し、2030年までに14.3GWの洋上風力発電設備を含め、電源構成の21.6%にあたる再生可能エネルギーの開発を見込んでいます。当社としてもここにビジネスチャンスを見出したいと考えており、動向を注視しています。

香港では当社のFSRUにより、初めてのLNG輸入ターミナルが今年7月から操業開始しました。香港は市街地が密集しており、工業用地向けの土地開発余地が乏しいためLNGの輸入が難しかったのですが、洋上での基地建設+FSRUという組合せにより受け入れが可能になりました。これによりCO2排出量の少ないガス火力発電の比率が大幅に増加し、脱炭素化に貢献できると考えています。

関連プレスリリース: https://www.mol.co.jp/pr/2023/23079.html

香港では環境分野以外でも、画期的なスチールコイル輸送部材MOL COILPORTER®の拡販にも力を入れています。外径1m超、重量10㌧以上という巨大なコイル状の鋼材を海上コンテナで運ぶために、誰もが簡単に組み立てできる専用の輸送部材を開発しました。発泡ポリエチレン製で再利用できるエコな商品だということもあり、国内外から注目を集めています。

インバウンド需要への働きかけや、経営計画の浸透を図る

商船三井専務執行役員 塩津信男

―――東アジア地域での展望をお聞かせください。

塩津

2023年4月からウェルビーイングライフ営業本部が立ち上がり、不動産フェリークルーズ事業のアップグレードを図っています。にっぽん丸に次ぐ第二の大型クルーズ船である「Seabourn Odyssey」の稼働により、ラグジュアリークルーズを拡充します。クルーズ事業やフェリーでは国内観光のターゲットとして東南アジアや東アジアの方々を重視していますので、担当地域を中心に、マーケティングなどの分野でサポートを行っていきます。

現在シンガポールにメインとなる拠点がありますが、月に1度は東アジア地域の拠点である上海や台湾に滞在するようにしています。現地スタッフも含めBLUE ACTION 2035についての対話会を積極的に行い、ときには社長にも同席していただくなど、理解を深めるための活動に力を入れていきます。

MOL Blue Action 2035 アジア地域での対話会

 

MOL BLUE ACTION 2035 アジア地域での対話会

 

さらに人材の発掘・育成も重要です。各地域のMOLブランドの組織には大変優秀な人材が集まってきていますので、活躍の場をつくるための制度を整備し、能力を発揮できる環境を整えていきます。この点においては今年1月に新設されたHCSD(Human Capital Strategy Division)が中心となり、国内外の人材育成を行っています。
  • 各地域のMOLブランドの組織による人材発掘、育成

「日本人」ではなく「地球人」として謙虚な気持ちで
地域に溶け込む

―――海外で仕事をするうえで、心掛けていることはありますか?

塩津

北米、中南米に続いて海外赴任は3回目になります。大切にしているのは、「その国に住まわせてもらっている、仕事をさせてもらっている」という謙虚な姿勢。つい日本でのやり方にとらわれ比較をしがちですが、郷に入っては郷に従うべきです。地域のコミュニティに積極的に参加するなど、ローカルネットワークに飛び込み現地の方々とフラットに関係性をつくっています。妻に「あなたは何人なの?」と言われることもありますが、「私は地球人です」と答えています(笑)。

また地域を知るという点からも、休日は積極的に出かけるようにしています。時間をつくって妻と一緒に旅行に出かけ、歴史や文化を肌で感じています。最近ではマレーシアのマラッカ海峡、タイのアユタヤ遺跡やプーケット、ベトナムのダナンなどに足を伸ばしました。リフレッシュになり、また仕事にも役立っていると感じます。拠点のあるシンガポールは、アジア各地にアクセスしやすい点も魅力ですね。
  • 駐在員としてローカルネットワークに飛び込み現地の方々とのローカルネットワークを構築
    アジア地域では食生活も含め、ほぼ不自由を感じたことがありません。貴重な駐在生活を楽しみながら、仕事を通じて地域の発展に貢献していきたいです。

 

商船三井 東アジア地域、東南アジア・大洋州地域担当役員 塩津信男塩津 伸男(しおつ のぶお)
専務執行役員
MOL(Asia Oceania) Pte.Ltd. Managing Director, MOL Treasury Management Pte.Ltd. Managing Director 委嘱

 



1963年6月生まれ、神奈川県出身。1986年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。2002年鉄鋼原料船部鉄鋼原料チーム課長、05年MOL CHILE出向、11年不定期船部不定期船統括グループリーダー、13年鉄鋼原料船部鉄鋼原料・統括グループリーダー、15年鉄鋼原料船部長、17年執行役員、ドライバルク船一部長、21年常務執行役員(アジア・中東・大洋州地域担当)、23年東アジア地域、東南アジア・大洋州地域 担当(専務執行役員)に就任。

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