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【東アジア、東南アジア・大洋州地域代表 塩津 伸男】 本気、且つ、未来志向での「ぶつかり稽古」が組織を強くする。環境×地域×ポートフォリオ戦略によるBLUE ACTION2035実現への道 ~前編~

  • 海運全般

2023年08月21日

ドライバルク事業を中心にキャリアを重ね、現在では専務執行役員として東アジア地域、東南アジア・大洋州地域を担当する塩津 伸男氏。商船三井グループの中でも船舶管理会社、事業会社など多くのグループ企業が存在するシンガポールにおいて、商船三井グループの統括会社としてのトップを務め、今後の更なる拡大が見込まれるエリアでの事業をどのように見据えているのか、まずは東南アジア地域とオセアニア地域についてお話を伺いました。

MOL Group south east asiaーpacific

仕事における信条とは?

商船三井専務執行役員 塩津信男


  • ―――ご入社されてから現在までのご経歴を簡単に教えてください。


    塩津

    入社してすぐ横浜の臨港支店に配属され、営業も含めた海運業現場のイロハを叩き込まれました。次に、実際の北米勤務も含め、定航部門の北米部に6年間程勤務しました。その後は長くドライバルク事業に携わり、不定期船や鉄鋼原料船など一通りの業務を鉄鋼原料船部担当役員に至るまで担当、その間に、南米西岸5か国を統括するチリ統括現法社長も経験しています。2021年からシンガポールに赴任し、アジア・中東・太平洋地域を担当。2022年からは地域戦略として南アジア・中東地域を常務執行役員 Ajay Singhに任せ、2023年からは東アジア、東南アジア・大洋州地域担当となりました。

MOL (Asia Oceania) Pte. Ltd. オフィス
MOL (Asia Oceania) Pte. Ltd. オフィス

  • 今までで特に印象に残っている仕事としては、2002年頃の鉄鋼原料船部時代のエピソードでしょうか。当時の営業は国内のお客様が中心で、中国や韓国の鉄鋼会社との取引はわずかでした。社内でも後ろ向きな声ばかりが聞かれる逆風の中でしたが、今後この市場はとてつもない規模になると確信していましたので、足しげく現地へ通い、志を同じくする仲間と共に粘り強く交渉を続けました。その結果、日本の海運会社ではおそらく初めて中国・韓国の鉄鋼会社との長期契約を決めることができたのです。もちろん、そのような成功体験ばかりではなく失敗も数多くしてきましたが、自分を信じて新しい道を切り拓いていくことの大切さ、またそれに賛同し協力してくれる仲間の心強さ、必要さを強く感じましたね。

Industrial building factory イメージ

イメージ

―――仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

塩津

  • 大きく3つあります。1つめは、会社としての進むべき方針をふまえたうえで、忌憚のない意見交換をすることです。相撲で言う、いい意味での「ぶつかり稽古」のようなもので、格上の力士が胸を貸すように上司は部下を受け止め、未来志向でディスカッションすることが重要だと思います。私も昔はよく当時の上長にぶつかっていましたが、皆さん広い度量で受け止めてくださいました。

未来志向の対話

  • 次に、相手の立場に立って物事を考えること。相手を思いやることができれば、相手も自分を受け入れてくれるものです。現在駐在しているシンガポールの拠点には、本社以上にさまざまなバックグラウンドを持つスタッフが働いています。そのため多様な価値観を理解し、受け止め、一緒に前に進むことの大切さを痛感しています。

多様性の尊重

そして、できるだけ早く動き出すこと。市場の調査や分析はもちろん大切ですが、そればかりに時間をかけてしまっては何も生まれません。大枠を決めたら、タイムラインを決めてスピーディに行動することは、特に新規事業開拓において重要です。もちろんじっくり取り組むのが得意なメンバーもいますので、プロジェクト全体としてバランスがとれていればよいと考えています。
  • スピード重視MOL(Asia Oceania) Pte.Ltd. Townhall meeting

Town hall meetingの様子 

環境戦略×事業戦略×ポートフォリオ戦略で
新たなビジネスチャンスを掴む

  • ―――担当地域全体で、今後どのような動きを考えていますか?

    塩津

    2020年からのコロナ禍では、感染対策を行いながら現場をいかにうまく回すかという点に腐心してきましたが、同時にスタートダッシュの準備を着々と進めていました。商船三井では、「BLUE ACTION2035」と環境ビジョン2.2を策定し、これからのあるべき姿を明確に示しています。「BLUE ACTION2035」では事業ポートフォリオへの変革を目指し、非海運事業を約25%から40%に高めていくことを目指しています。また、環境ビジョン2.2では、具体的なターゲットKPIを定めて、2050年のネットゼロ・エミッション達成に向けてクリーンエネルギーの導入や新たなビジネスモデルの構築を掲げています。この2つの目標をいかに事業に落とし込むかという点に注力しており、新規事業開拓はもちろん、海運事業の延長であってもそこから派生する新たな分野を開拓していくなど多方面での展開を模索しています。

    新たな事業推進体制の下、意思決定の質・スピードを高め、地域組織が本社と協働して事業開発・運営を行うべく、各組織のスタッフも充実させる必要があり、人事面での見直しも同時に取り組んでいるところです。

商船三井専務執行役員 塩津信男

【東南アジア】各国の企業と協業し、脱炭素プロジェクトを推進

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“カーボンニュートラル時代に期待されるCCUSとは(前編)(後編)

  • そのほかに脱炭素という点では、フィリピンやベトナムの洋上風力発電事業をはじめ、各国で2050年、2060年に向けたネットゼロへの取り組みを進めていますが、その中でシンガポールが中心的な役割を果たしています。グローバル企業の本社が設置されていることや、シンガポール政府の後押しもあり、地域のハブとして機能しています。当社もシンガポールに大きな拠点を置く企業の一員として、最近、GCMD(*)にストラテジックパートナーとして加入しましたので、これを契機にシンガポール発の世界的な脱炭素推進に更に大きく貢献していきたいと考えています。
  • (*)GCMD (Global Centre for Maritime Decarbonisation) は2021年8月1日に設立された非営利組織。世界最大のバンカリングハブで、世界第2位のコンテナ港であるシンガポールに戦略的に位置しており、海事産業におけるGHG排出削減支援のため、次世代燃料の基準を作り、実際にエンドツーエンドで低炭素ソリューションを実証し、先駆けとなるプロジェクトへの資金提供を通じ、セクター間の協力を促進しています。

商船三井の東南アジア地域での戦略

【オセアニア】環境先進国で、再エネ分野での成長を見据える

―――大洋州(オセアニア)地域についてはいかがでしょうか。

塩津

  • オーストラリアは鉄鉱石、石炭、LNGが主要な輸出品目であり、また自動車輸送の分野でも当社にとって大きなインパクトを持つ国です。また国を挙げて再生可能エネルギーへの転換を推し進めていることから、同分野でも商圏を拡大していきたいと考えています。

    たとえば大手エネルギー企業であるオリジンとは、グリーンアンモニアのサプライチェーン構築について協業しています。グリーンアンモニアとは、再生可能エネルギーを用いて生成された水素(グリーン水素)を原料とするアンモニアのことです。今年7月からはニューキャッスル港の「クリーンエネルギー地区建設プロジェクト」も本格始動し、オーストラリア政府のバックアップも受けながら脱炭素社会・地域の雇用創出を目指しています。

  • これらの背景もあり、今年4月にはニュージーランド国代表を新たに設置しました。今後は、本業である海運事業にも大きくかかわる、再生可能エネルギー関連を中心に新規ビジネス開拓をさらに強化していきます。水素・アンモニアなどの次世代エネルギーについて上流投資の可能性を追求し、商船三井の新しい姿を模索していきたいですね。

MOL SHIPPING (AUSTRALIA) PTY LTD. Office

MOL SHIPPING (AUSTRALIA) PTY LTD.

MOL SHIPPING (AUSTRALIA) PTY LTD.

(後編へ続く)

 

商船三井専務執行役員 塩津信男■塩津 伸男(しおつ のぶお)
専務執行役員
MOL(Asia Oceania) Pte.Ltd. Managing Director,
MOL Treasury Management Pte.Ltd. Managing Director 委嘱

 

 



1963年6月生まれ、神奈川県出身。1986年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、大阪商船三井船舶(現商船三井)入社。2002年鉄鋼原料船部鉄鋼原料チーム課長、05年MOL CHILE出向、11年不定期船部不定期船統括グループリーダー、13年鉄鋼原料船部鉄鋼原料・統括グループリーダー、15年鉄鋼原料船部長、17年執行役員、ドライバルク船一部長、21年常務執行役員(アジア・中東・大洋州地域担当)、23年東アジア地域、東南アジア・大洋州地域 担当(専務執行役員)に就任。

 

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