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北極海航路輸送におけるトップランナーを目指して

  • エネルギー

2020年12月21日

 近年、北極海航路が注目を集めていますが、商船三井は北極海航路輸送のパイオニアとして、北極海航路事業に携わってきました。2018年には、世界初となる砕氷LNG船を竣工させ、LNG(Liquid Natural Gas =液化天然ガス)をロシアから中国に輸送するにあたり、北極海航路の通航(夏季のみ)を開始しました。商船三井は、資源の安定輸送と、CO2削減の両立に向け、北極海航路輸送におけるトップランナーを目指していきます。本ブログでは、北極海航路の概要や今後、輸送に使用する砕氷LNG船の概要などについて、2回に分けて解説します。

(動画)厚い氷を砕きながら航行する砕氷LNG船“VLADIMIR RUSANOV”

 

北極海と北極海航路

 「北極海」とは、その名の通り、北極を中心としてユーラシア大陸と北米大陸などに囲まれた海を表します。国でいうと、アメリカ、ロシア、カナダ、デンマーク、ノルウェーの5か国に囲まれている海域です。この北極海を通って、太平洋と大西洋を結ぶ航路を「北極海航路」と呼びます。さらに北極海航路は大きく二つに分けられ、ユーラシア大陸のロシア沿いを通る航路を「北東航路」(下図 緑線)、北米大陸のカナダ沿いを通る航路を「北西航路」(下図 赤線)と呼びます。航路とは言うものの、北極海は海氷や流氷などに覆われており、2000年以前では、一般の船舶が通航することはほとんどありませんでした。

北極海と北極海航路 商船三井が解説

(国交省資料より)

 一方、近年の世界的な温暖化により、海氷面積は減少傾向にあり、2000年代から徐々に北極海航路の開通が始まりました。北極海の海氷は様々な気象の影響を受けるため、年により開通期間に増減はありますが、現在では概ね8月頃~10月頃の期間に航行可能となっています。
 夏季期間において北極海を航行する際は、基本的にはロシアの原子力砕氷船が先導して、海氷を割り、水路を切り開いた後ろを貨物船が続く方法をとりますが、商船三井の保有する砕氷LNG船では、砕氷船の先導に頼らずに北極海航路を東側に航行し、ベーリング海峡経由、東アジアに向かうことが可能です。

北極海航路を砕氷船に先導され進むタンカー

 (砕氷船に先導され進むタンカー CNIMFより)

北極海航路が注目される3つの理由

 上述の通り、北極海の海氷面積は減少傾向にあり、特に夏季の北極海の海氷面積が減少し、船舶通航が可能になったことで、東アジアと欧州を結ぶ際の、北極海航路活用に向けた議論が国内外で盛んになってきました。日本でも、内閣府による2014年の海洋基本計画(第3期計画)において、政府が計画的に講ずべき施策として、北極海航路の利用のための海氷分布予測システムの構築やインフラ整備などが掲げられるなど、注目度が年々高まっています。

北極海航路が注目を浴びるのには、主に3つの理由があると言われています。

① 航行日数の短縮と温室効果ガスの削減


欧州・ロシア~東アジア間を航行する場合において、北極海航路を利用により、航海距離が短縮されます。例えば、東京港とオランダ・ロッテルダム港を結ぶ航路は、通常であればスエズ運河経由で約2万kmなのに対し、北極海経由であれば約1万3000kmとなり、航行距離は30%以上短くなります。距離が短縮されれば、航海日数が短くなるだけでなく、燃料消費量も削減され、結果、輸送船舶から排出される温室効果ガスの量も減少させることが可能になります。

なお、商船三井が行っている、ロシア北極圏から東アジアへの北極海航路を通じた輸送は、スエズ運河経由に比べて航海距離を約65%短縮でき、温室効果ガスの排出削減に寄与します。

 

 

 

② 北極海に眠る豊富な資源

2つめの理由は、北極海に埋蔵される豊富な原油や天然ガスなどの資源を輸送できるということです。実際にロシアのNovatek社は、北極海に面するヤマル半島(ヤマルは現地のネネツ語で「End of the World=世界の果て」という意味)の中部で、天然ガス田開発とLNGプラント・輸出港を建設、2017年から東アジア・欧州への海上輸送が始まりました。LNGの生産能力は年間1,650万トンで、世界最大級のLNG生産拠点となります。2017年12月には第1船となる砕氷LNG船が輸出港ヤマル・サベッタ港を出港、商船三井も計3隻の砕氷LNG船の運航を担っています。さらに、同地域における他の出荷基地からの輸送プロジェクトにおいても、商船三井は3隻の新造砕氷LNG船を、2023年より順次竣工・投入し、資源の安定輸送に貢献します。(プレスリリースはこちら

(ヤマルLNG基地からのLNG輸送ルート)

③ 海賊出没海域を避けられる

3つ目の理由としては、海賊に遭遇する可能性がないということが挙げられます。通常、スエズ運河を経由して欧州とアジアを行き来する際には、アデン湾(ソマリア沖)やマラッカ海峡を通過する必要がありますが、この海域・海峡では、今も多くの海賊が出没しており、自衛隊をはじめとして、各国の海軍が、貨物船の護衛にあたっています。北極海航路を通航することで、海賊リスクの高い海域を避けることができるため、積載貨物の金額が大きく海賊に狙われやすい貨物船にとっては、とてもメリットのある航路となります。

 

北極海航路輸送強化に向けた新たな取り組み

 ヤマルLNG基地からの砕氷LNG船の運航を担うにあたり、商船三井の砕氷LNG船の船員は、マカロフ海事大学(正式名称:ロシア・マカロフ提督記念国立海事・内陸水運大学)が運営するトレーニングセンターで氷海航行訓練や極寒地サバイバル訓練といった特殊訓練を受けています。2019年9月、商船三井はマカロフ海事大学と船員訓練及び船員訓練生の採用・育成を目的とした覚書を締結しました。同大学からの船員訓練生の採用、将来の商船三井運航船の船長・機関長としての育成を視野に長期計画を立てています。特殊な北極海航路での航行に適した船員育成を進めることで、北極海航路輸送におけるリーディングカンパニーを目指し、北極圏からのエネルギー資源輸送・製品輸送の需要に貢献できるよう積極的に取り組んでいます。

商船三井とロシアのマカロフ海事大学との船員教育における連携。

プレスリリースはこちら

 第二回は、砕氷LNG船の構造概要や北極海航路の将来展望を解説します。 

 

商船三井では、温室効果ガス排出量の抑制だけではなく、低炭素事業の取組も拡大しています。その内の一つ、FSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)事業は、環境にやさしいエネルギーとして世界でLNGの需要が増える中、その導入を低コスト、短期間で実現するための特別なソリューションです。商船三井(MOL)は日本で唯一のFSRU保有・操業会社として、様々な情報をご提供しています。

 
   

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AYU.M

記事投稿者:AYU.M

2008年入社。これまで石油タンカーとばら積み船の運航を担当。2017年からはマーケティング部門に所属し、現在、本サイトの運営に携わっています。
当社のLinkedInアカウントの運営も担当していますので、ぜひフォローしてください! 趣味は、韓国アイドルのおっかけです。

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