2021年03月04日
入港する船舶・荷揚げする貨物に対する検疫が厳しいことで知られているオーストラリア。2019年より農業害虫であるカメムシに対する検疫が強化され、自動車船・在来船の運航に大きな影響を及ぼしています。このような状況の中、商船三井は船舶、貨物におけるカメムシ対応の取り組みがオーストラリア当局の定める基準に達していると判断され、昨年8月、邦船社として初めてVSPS(Vessel Seasonal Pest Scheme)の認証を取得しました。今回のブログでは、これまで繰り広げられているカメムシとの熱い戦いをご紹介します。
オーストラリア検疫当局は、カメムシが果物や野菜などの農産物に害を及ぼすことを理由に、カメムシの主な生息域である北米やヨーロッパ諸国等を従来よりハイリスク国として指定し、それらの国から輸入される貨物に対しては、船積み前の熱処理、もしくは燻蒸措置を義務付けています。そして2019年、日本もターゲットリスク国として指定されました。ただ、日本の場合「貨物の船積み前処置は不要、本船のオーストラリア到着時の検査を厳しく実施する」というルールにとどまっていますので、自動車等の貨物を、裸(梱包していない状態)でお預かりする海運会社にとっては悩ましい課題です。
商船三井では、農業害虫の専門家やオーストラリア当局をはじめとする関係者と協議を重ね、様々なカメムシ対策を実施しています。
例えば;
・ 貨物を積載する前のカーゴホールド内清掃の徹底
・ 積み荷役中の適切なVentilationの操作(荷役ランプ間口からのカメムシ侵入を防ぐ)
・ 航海中の乗組員によるカーゴホールド内の捜索
・ カメムシ発見有無に関するタイムリーかつ詳細なオーストラリア当局との情報共有
また今シーズンは新たな対策として、カーゴホールド内を積み港ごとに防虫ネットで区切る対策を開始しました。そうすることで、航海中あるいは荷揚げ時にカメムシが発見された場合にも、ハイリスクエリアを限定でき、荷揚げ可能車両数の最大化と、揚げ荷役スケジュール遅延リスクの最小化が可能になると考えています。
(貨物積載前のカーゴホールド内清掃の徹底)
(航海中のカメムシチェック)
日本・韓国発豪州向け航路に従事する自動車専用船で実施しているこれらの取り組みが、オーストラリア当局の定める基準に達していると判断され、前述の通り商船三井は邦船社として初めてVSPS(Vessel Seasonal Pest Scheme)の認証を取得しました。これにより、豪州各港入港時の検疫検査がよりスムーズとなり、積載車両の荷揚げ遅延リスクを低減し、お客様へのサービス品質の向上に寄与することが期待されます。
上記の各種対策が奏功し、大きな荷揚げ遅延なく今年のハイリスクシーズンは間もなく終わろうとしていますが、最後まで気を抜かずに対応すると共に、今シーズンの結果をレビューしながら、来シーズンに向けて各種対策の更なるブラッシュアップを実施する予定です。
ここまで自動車輸送を中心にご紹介しましたが、オーストラリアに寄港する船舶は、自動車専用船だけではありません。商船三井では、MOL PHCで担当する鉄道レール輸送など、在来船においても同様の問題をかかえています。
これらの対策として、サーベイヤーによる事前検査を積地で実施、乗組員によるデイリーチェックに加えて、オーストラリア当局が認めた業者による適切な燻蒸を途中の港で行っています。
(画像:鉄道レールを積載中の本船)
商船三井は、自動車をはじめとする各種貨物の輸送を通じ、豪州の社会・経済の発展とともに持続的に成長する企業として、同国への農業害虫の侵入リスク低減に貢献します。また安全かつ確実にお預かりした貨物をお届けできるよう、様々な安全対策に取り組んでいきます。
記事投稿者:AYU.M
2008年入社。これまで石油タンカーとばら積み船の運航を担当。2017年からはマーケティング部門に所属し、現在、本サイトの運営に携わっています。
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