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海運業界的視点でアフリカを分析する(1)

  • マーケット分析

2020年11月07日

 ”最後の巨大市場”として、今アフリカ大陸が注目されています。アフリカといえば、資源のイメージを持たれている方が多いかもしれません。2000年代に入ってからの価格の高騰や掘削技術の進歩によりこれまでに発掘できなかった深海の石油や天然ガスが開発され、更にはレアメタル、と多様な資源へのアクセスが可能となりました。当社は、重点戦略地域として、アフリカ2国に国代表を設置、アフリカで展開される様々なビジネスに参画しています。

 海運業界的アフリカ分析の第一回目として、アフリカの歴史、経済構造から、アフリカの今後の発展やビジネスポテンシャルを考察します。
 
 
  1. 貿易統計からみるアフリカ経済

     アフリカと一言でいっても54か国、経済規模も様々です。まずは、貿易統計からアフリカ経済を俯瞰してみましょう。下表は、アフリカの対世界貿易額に占める主要国・地域の割合です。ここでみていくと、2000年を起点に2つのポイントが読み取れます。1つは、輸出額が急速に大きく伸びていることです。これは、中国を始めとした新興国の急速な経済成長を背景とした資源需要の増加によるもので、いわゆる資源ブームの恩恵と言えます。もう一つは、主要な輸出相手先が欧州から中国に推移しつつあることです。2000年以前は、輸出先の大半が欧米諸国でしたが、この背景はアフリカの歴史と深く関係しています。

アフリカの国別輸出額推移

(2000年を起点に、輸出額の増加、輸出国の変化が確認できる)

歴史に翻弄されてきたアフリカ

  1. 歴史に翻弄されてきたアフリカ

     アフリカ諸国の産業構造は、19世紀から始まった欧米諸国による植民地支配に大きく影響を受けています。初期の頃は、海岸部に交易拠点を設け、黒人奴隷貿易が行われていましたが、19世紀中頃からは、内陸部の豊富な資源の存在が注目され始め、工業原料などの資源供給地として、自国製品を調達するための市場として認識されるようになりました。列強は競ってアフリカの領土化に乗り出し、鉄道建設や土地の整備等を行いました。現地の人々を雇用し、輸出向けの作物(コーヒー、茶、たばこ、ゴム)を栽培、宗主国である欧米諸国に向けた、特定の品目を生産するモノカルチャー経済が形成されていきました。残念ながら、この過度に輸出向けに特化した産業育成は、自国に発展のための波及効果を生むものではなかったのです。資源搾取が中心の近代経済が、今日までアフリカの産業構造に大きな影響を与えてきました。

独立後のアフリカ各国の主要政策は

 第二次世界大戦後、1960年代にアフリカの多くの国が植民地支配からの独立を果たしました。独立後は、植民地型の経済からいかに脱却するかに焦点が当てられ、主に2つの政策が採られました。1つ目は、行政や経済の実権をアフリカ人の手に取り戻し、国民の平等を目指す「アフリカ社会主義」と呼ばれる政策です。現地政府の大きな介入により、外資系企業が国有化されたり、アフリカ人を多く公務員に登用するといった政策が取られました。2つ目は国内生産の工業化です。一次産品(農産物や資源)を輸出するだけでは先進国への従属性を断ち切ることは難しいため、現地で輸入品の代替となる国内生産を目指す動きが生じました。

残念ながら、これらの政策は成功したとは言えず、1980年代のアフリカ経済危機に繋がっていきます。

経済危機と復活までのポイント

前述の2つの主政策を推し進める中で、政府が深く経済に介入したり、経営が非効率的な国営企業が増えたことで、政府の赤字負担が増加しました。更に、1980年代は干ばつによる食糧生産減少による輸入の増加や、世界的な金融危機、資源価格の低下等により、累積債務が増加、国際収支の悪化をもたらしました。結果として、アフリカ諸国では、IMF(国際通貨基金)の構造調整政策を受け入れなくてはいけないほど、財政が悪化する状況に至りました。

その後、資源ブームと呼ばれる、新興国の経済成長による資源需要の増加、および、世界的な金融緩和による、商品・資源価格の上昇の波に乗ることができたアフリカは、大きな経済成長を果たしました。アフリカの名目GDPを見ても2000年以降、商品価格指数(2015年を100とした場合)と同じような動きで増加しており、アフリカの経済発展を促したのは、資源価格の高騰とそれに伴う輸出産業の拡大であったことがわかります。

アフリカの資源ブームとGDP

(商品価格の上昇と共にGDPも増加)

海運とアフリカの関係

これまで見てきたように、欧米諸国向けの輸出を基本としていたため、かつてより、在来船、コンテナ船が定期的にアフリカに寄港していました。さらに、アフリカの経済成長に伴う、乗用車需要拡大により、自動車(主に中古車)の輸入も増加したことで、自動車専用船の寄港も増えることになりました。

また、資源ブーム時における、資源輸出量(重量ベース)を見てみると、2000年以降アフリカからの資源輸出量が大きく増加していることがわかります。これに伴い、ばら積み船、タンカーなど、資源輸送に従事する輸送船の寄港も増えていきました。

資源ブーム時におけるアフリカからの資源輸出量推移

(資源ブーム時におけるアフリカからの資源輸出量推移)

アフリカで展開する当社事業

このように、アフリカの発展と海運業界は深い関係があります。商船三井でも、エネルギー・資源、自動車、コンテナ輸送において、かねてより様々な輸送船が、定期的にアフリカ各港へ寄港しています(現在、コンテナ船はOcean Network Express社にて運航)。近年では、LNG事業、発電船事業を中心にアフリカでの事業を拡大していることから、2020年4月には、新たにモザンビーク・南アフリカ国代表を設置しました。
特に発電船事業は、電力需要がひっ迫するアフリカ各国において、初期投資を抑え、かつ短納期で、環境低負荷のLNGを燃料とした電力を供給できる画期的な事業です。当社は、発電船事業のパイオニアであるトルコのKarpowershipと提携し、「KARMOL」のブランド名でLNG発電船事業を展開しています。

MOLとKarpowershipはLNG発電船事業においてパートナーシップを結んでいます。
 
 

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