2021年02月10日
今回は2017年よりトルコで操業中の世界最大級のFSRU 「MOL FSRU Challenger」の船長より、現場からのレポートをお届けします!
FSRUはFloating Storage and Regasification Unitの略で、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備と呼ばれています。洋上でLNGを再ガス化し、陸上パイプラインへ送出する設備を備えた液化天然ガス(LNG)運搬船で、そのLNGは主に暖房や発電に使用されるエネルギー源です。FSRUを使用すれば、受け入れたLNGを再ガス化して陸上のガスネットワークに直接供給する事が出来るので、陸上の再ガス化設備と比較してコストや時間が低減できるソリューションです。
LNG輸入の時期や量はエネルギー需要によって絶えず変動している為、海外から船を使用して輸入することで国際的なガスマーケットへアクセスが容易になり、安定的供給が可能になります。
エッフェル塔よりも長い世界最大級のFSRU「MOL FSRU Challenger」は、2017年よりトルコのイスケンデルン湾にあるBOTAS Dortyolターミナルで、トルコ国内の旺盛なガス需要に対応した操業を行っています。
<本船の全長はエッフェル塔より長い>
全長345メートル(1,132フィート)の本船は、263,000立方メートルのLNGを貯蔵でき、LNGを満載にすると、7万世帯以上の年間ガス消費電力を賄うことができます。
FSRUに貯蔵されたLNG(液化天然ガス)は、FSRU上で再ガス化し、陸上へ送ガスするため、FSRU内のLNGは一旦減少します。その後、次のLNG船が到着し、FSRUに接舷、積み込んだLNGをFSRUへ移送、FSRUで再ガス化、陸へ送ガス、という一連の作業を繰り返すオペレーションです。
MOL FSRU Challenger自体は、緊急時などを除き、常に桟橋に係留されており、LNGを積載したLNG船より、直接LNGの供給を受ける体制になっています。
また、下図のように、船と船が接舷し、貨物の移動を行うことを、Ship to Shipオペレーションと呼んでいます。
(桟橋・FSRU・LNG船の関係図。LNG船とFSRUはShip to Shipオペレーション。)
接舷するLNG船とMOL FSRU Challengerは、接触による損傷を防ぐため、FSRUの海側(LNG船が接舷される側)には6基のフェンダーが設置されています。また、本船はあらゆるサイズのLNG船を安全に係留できるよう、係留設備を備えています。
係留作業は、FSRUの乗組員がLNG船の乗組員、現地の水先案内人及びタグボートと連携をして実施する作業です。また、荷役ホース接続作業は、FSRU及びLNG船の乗組員が協力し実施します。
全体の指揮を執るFSRU船長として、きちんとした手順と密なコミュニケーションに基づいた適切な連携作業が行われた時や、効率的な作業が行えチーム全員が満足した時に、チームの強さを感じます。この作業は、全関係者の協力と最高の操船技術・専門技術を駆使して行う事が必要とされます。
なお、LNG船の停泊中は、安全対策として、現地水先案内人の乗船に加えて、タグボートがLNG船の近くにスタンバイしています。
(図左:FSRUとLNG船との間に配置されるフェンダー)
LNG船からFSRUへのLNG移送は、荷役ホース接続部を含むすべての安全チェックが実施された後に始まり、最初は低レートで送液を開始し、荷役前の打ち合わせで合意された一定の流量まで徐々にレートを上げていきます。また、LNG船からのLNG移送中であっても、FSRUから陸上への送ガスが可能です。
(LNGは約-162°Cであるため、LNGが通るホースには霜が降りている)
経験豊富なFSRU乗組員達は、LNG船乗組員及び桟橋施設制御室で当直を担当する陸上側の作業員と協力して、作業の進捗状況を常に監視しています。
(荷役作業終了後の係留索切り離し作業中)
LNG船がFSRU乗組員と連携しながら、係船索を放ち、出航した時点でようやくShip to Shipオペレーションは終了します。
”MOL FSRU Challengerチーム”は、お客様のガス需要に基づいて、次回のLNG船の受け入れ日を見積ります。
記事投稿者:エンジェル・マルリ船長
1996年よりLNG船に乗船し、2005年に一等航海士としてMOL LNG Transport (Europe) Ltd.に入社しました。 2008年に船長に昇進して以来、さまざまな種類のLNG船や航路を経験してきました。50歳代となった今、健康を意識し、毎日の運動や船内食堂への訪問回数の制限に励んでいます。
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