BLOG ブログ

世界で活躍する商船三井「チリ編」 ~陽気で真面目な南米の優等生。地球の反対側へインタビュー~

  • 海運全般

2023年02月15日

チリは南北に4,300kmにもおよぶ細長い国土を持つ南半球の国です。銅や木材などの天然資源の他、鮭やワインなどといった漁業・農業関連品を中心とした輸出が同国の経済を担っています。季節はちょうど日本と真逆にあたり、取材を行った1月の首都サンティアゴの平均最高気温は約30℃と夏真っ盛り。そんな地球の反対側で奮闘するMOL Chile Ltda.代表の淵上拓也氏に、チリでの生活やビジネスの特徴について伺いました。

日本から飛行機で約30時間 豊かな文化を有する魅力的な国

ーーチリに赴任されて約1年ということですが、現地での生活はいかがですか?

淵上

私はもともとドライバルク関連のビジネスに長く携わっており、チリ赴任前まではインドで駐在生活を送っていました。チリの主な輸出品でもある銅精鉱の輸送を含め、これまでの経験を踏まえチリの駐在員に選ばれたようです。しかし、辞令を受けた2021年4月はコロナ禍真っ只中。チリ政府がちょうど国境を封鎖したタイミングと重なってしまい、渡航できたのは同年の12月でした。

チリの公用語はスペイン語で、会話のスピードが速いのが特徴です。ビジネスでは英語でのやりとりが多いのですが、日常生活ではスペイン語しか通じない場面も多く、赴任当初は苦労しましたね。ようやく少しは理解できるようになりましたが、勉強の毎日です。

私が暮らしているのは、チリの南北中央に位置する首都サンティアゴ。同国最大の都市であり、各国からの駐在員も多い場所だけに物価は高い印象です。たとえばスーパーでカレールーは1箱1,000円近くするイメージです。またインフレが大きな社会問題になっており、消費者物価は前年同月比で13%程度上昇しています。会社の周りのレストランも軒並み値段が高く、お金が貯まらないので困っています(笑)。

余暇の過ごし方ですと、機会があれば鉄道旅行を楽しんでいます。私は鉄道ファンで、いわゆる「乗り鉄」。チリは貨物列車ばかりで、あまり旅客線が充実していないのが残念ですが、連休には周辺国にも足を延ばしています。アンデス山脈が南北に連なるため、標高が高く温泉もたくさんありますから、行った先で景色を楽しみながら温泉に入ることもあります。

チリは貨物列車が多く旅客列車は少ない

チリの皆さんはアウトドア好きな方が多く、大きな車にキャンプ用品を積み込んで郊外に出掛ける姿をよく見かけます。スタッフの中には早起きをしてトレッキングを楽しみ、山の上で朝日を浴びてから出社するというアクティブなメンバーもいます。南米らしい明るい性格の人が多く、週末になると街のいたるところで夜遅くまで歌って踊っていますよ。

――食生活はいかがですか?

肉や魚、野菜などの生鮮品は、ちゃんと選べばおいしいものを手に入れることができます。ウニも有名ですから、新鮮なウニをたっぷり使ってちょっと贅沢なパスタをつくることもあります。チリの方はBBQが大好きで、ベランダで肉や魚を豪快に焼き、ワインと一緒に楽しむのが定番。

チリ産ワインと肉料理

私もついつい肉を食べすぎて太ってしまうのではないかと心配しています。

またあまり知られていないかもしれませんが、チェリーやリンゴといった果物の生産も盛んで、輸出も増えています。

ーーMOL Chileには8名のナショナルスタッフがいらっしゃいますが、チリの国民性についてどう感じていますか?

「南米の優等生」と言われてきただけあり、他の周辺地域と比べても真面目な人が多いと感じます。責任感をもって仕事に取り組みますし、明確に条件や期限を伝えればトラブルになることはありません。誕生日にはみんなでランチを囲んでお祝いをしたり、来客があれば集まってもてなしたりと、風通しも良く、良好なチームビルディングができていると思います。

MOL Chile Ltda

日本に対しても総じてポジティブな印象を持っているようです。若い世代では小さいころから日本のアニメに親しんでいる人も多く、また両国とも地震国という点での親近感もあるかもしれません。距離はありますが、太平洋を隔てて隣の国ですしね(笑)。

経済格差が教育格差を生み、スタッフの採用にも影響が

ーーチリの政治・経済で特に気になっていることはありますか?

2019年の大規模な反政府デモをきっかけに、経済格差の問題が明るみになりました。格差是正を主眼とした政策を打ち出して選挙活動を進めてきたボリッヂ氏が35歳(当時)で大統領に選ばれましたが、新憲法草案の否決などを経て、従来からの経済拡大政策に少々修正せざるを得ないような状況になっています。最近の資源ナショナリズムの流れを受け、銅鉱山会社に税負担を強いるような議案も浮上していますが、この結果によっては将来的な新規鉱山投資が抑制されてしまうことも考えられ、当社のビジネスにも影響を及ぼす可能性があります。

その他に現地スタッフを採用する際に苦労するのは問題なく英語を話すことができる人を探すことです。運航する船の船長や海外の関係先とコミュニケーションをはかるために英語が必要なのですが、当地は母国語であるスペイン語で十分に生活ができる状況であることから、英語を問題なく話すことができる人は思ったより少ないです。またスタッフがモチベーションを維持できるような仕事環境を提供するよう日々試行錯誤しています。

チリ積み銅精鉱の輸送でトップレベルのシェアを誇る
MOL Chile

――MOL Chileの事業内容について教えてください。

銅精鉱の輸送事業が中心です。銅精鉱とは銅精錬に用いられる原料で、銅鉱石を破砕・浮選し、銅品位を30%程度にまで高めたものです。チリ全体では年間約1,300万トンが輸出されていますが、私たちはチリ積みでは年間約200万トンの銅精鉱を輸送しており、トップレベルのシェアとなっています。

多くの場合、銅精鉱輸送は合積みで行われます。これは1隻の船に複数の荷主の貨物をまとめて輸送する方法で、貨物量や種類、輸送先などを考えながら最も効率的なローテーションを組むことが求められます。チリの沿岸には寒流が流れ込んでいて、潮のうねりの影響で港が急に閉鎖されてしまうこともあるのですが、そういった自然環境も相手にしながら、パズルのようにスケジュールを組み立てるのが非常に難しい部分です。日々シミュレーションと微調整を行い、スタッフ同士で密にコミュニケーションを取りながら効率の良いプランを立てられるよう尽力しています。

また、輸送に関する問題として、我々が主に扱うばら積み船を利用してチリが輸入する貨物量が、輸出される貨物量に対して少ない点が挙げられます。私たちでは輸入貨物と輸出貨物をバランスよく獲得するように日々営業活動を行っています。

MOL Chileの事業は銅製鋼の輸出事業中心

 

グリーンエネルギー分野での展開を見据え、チャンスを狙う

――MOL Chileは、商船三井の中でどのような位置づけだとお考えでしょうか?

商船三井のドライバルク営業本部の中で、載貨重量10万トン以下までの船舶を運航しているのが「商船三井ドライバルク」です。主な営業拠点は東京、ロンドン、シンガポール、そしてここサンティアゴの4か所です。その中で銅精鉱を中心とした南米西岸のドライバルクビジネスを一手に引き受けているのがMOL Chileであり、事業運営上重要な拠点であると言えます。またサンチャゴに拠点を持ちスタッフを擁することで、南米の多くの国で公用語となっているスペイン語でお客様と現地の言葉でコミュニケーションができる利点があり、南米エリアでの事業を展開するうえで大きな強みとなっています。

また、商船三井として注力しているエネルギー分野でも再生可能エネルギー関係の事業が多く計画されているチリは注目されています。砂漠が多く、日差しが強いチリ北部では太陽光発電の開発が活発です。一方、風が強い南部では、風力発電の開発が盛んです。アンデス山脈の急こう配を勢い良く流れる川は、水力発電に役立っています。現在火力発電が3割程度を占めていますが、こうした自然環境を活かした再生可能エネルギーに切り替えていく取り組みが国を挙げて推し進められているところです。
近年では、全て再生可能エネルギーから製造する水素、アンモニア、メタノールといったグリーンエネルギー製造の計画が急増しており、海上輸送会社である当社としても何かチリの発展に協力したいと常に考えています。

チリ再エネマップ

チリ再エネポテンシャル

出典:図中に記載

従来注力しているドライバルク輸送に加え、グリーンエネルギー分野への進出などでもビジネスを広げ、北米・南米西岸域の中心になる拠点として、社内外でのプレゼンスを高めていきたいと考えています。

淵上 拓也 Takuya Fuchikami
Managing Director, MOL Chile Ltda.
Chief Country Representative of Chile, Mitsui O.S.K. Lines, Ltd.

  • クリーン代替燃料ホワイトペーパー

  • 会社案内

  • 輸送・サービスについてのご相談

  • その他のお問い合わせ