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世界の風力発電を取り巻く現状(前編)

  • 環境負荷低減

2021年08月17日

普及が進む再生可能エネルギーの中でも、風力発電は世界中で急速に広がりを見せており、風力発電で世界をリードする欧州では、陸上の風力発電に加え、沖合に風車を設置する洋上風力の普及が急速に進んでいます。洋上風力発電を取り巻く事業の現状を前後編に分けてご紹介します。前編である本ブログでは世界の風力発電の状況から、世界をリードする欧州での洋上風力に注目が集まる背景などについて触れていきます。

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普及が進む再生可能エネルギー 風力発電の立ち位置とは

COVID-19がエネルギー業界に与えた影響は甚大でした。BPの報告書”BP Statistical Review of World Energy 2021”によると、2020年エネルギー使用による二酸化炭素排出量は6%以上(第二次世界大戦以降最大)減少しました。世界中で感染拡大抑制のためにロックダウン政策がとられ、経済活動や日常生活が大きく制約を受けたため、とされています。一見、これは環境にとって素晴らしい事のように見受けられますが、パリ協定での気候目標を達成するためには、今後30年間、世界は毎年(2020年と同じレベルで)二酸化炭素排出量を削減する必要があり、そして多くの企業や政府が合意しているネットゼロ排出目標を達成するには、まだ十分ではないと報告しています。

目標達成のカギを握るといわれているのが再生可能エネルギーです。世界の再エネ発電量は2010-19年にかけて年平均成長率(CAGR)5.9%で増加し、同期間の発電量の成長全体の過半となる52.1%にまで達した(残りは化石燃料を使用した火力発電)といわれています。各国政府が実施する幅広い分野の政策に支えられ、再エネのコストは低下、技術開発も背景に信頼性は高まっており、発電の割合は年々増加傾向にあります。再エネ発電量増加の主要なけん引力となったのは風力であり、上記期間中CAGR17.1%で増加しました。

2010-19年にかけて発電量の伸びが最も大きかったのは風力発電

 

最終エネルギー需要の主要構成要素の一つである電力需要全体は、ロックダウン等により減少しているにもかかわらず、再生可能エネルギー(水力を除く、風力・太陽光・バイオエネルギー・地熱)による発電量は増加しています。過去5年間で世界の発電量増加の約60%を再生可能エネルギーが占めており、そのうち風力と太陽光は2倍以上に増加しています。

Renewable Power Generation

再生可能エネルギー発電量推移 2010-2020
出典:BP Statistical Review of World Energy 2021

世界の風力発電  

では、再生可能エネルギーの中でも増加が顕著な風力発電についてみていきましょう。2020年世界の風力発電量は1590TWh、国別の内訳は以下の通りです。1位は中国です。国をあげて再生可能エネルギー発電能力の拡大に取り組んでおり、旺盛なエネルギー需要を再エネで賄うため、着々と開発を進めています。一方、欧州各国の合計でみると、1位の中国を凌ぎ、欧州が風力発電が盛んなことが見てとれます。

horizontal bar chart wind generation by country -1

出典:bp Statistical Review of World Energy July 2021

また、2020年における、風力発電の新規導入量は93GWでした。COVID-19の影響下にも関わらず、世界の新規導入量は過去2番目となっています。

新規風力発電導入量.2020国別

風力発電新規導入量2020(国別)

さらにこの新規導入のうち、洋上風力の導入量を見ると、1位:中国(3.0GW)、2位:オランダ(1.4GW)、3位:ベルギー(0.7GW)、4位:UK(0.4GW)、5位:ドイツ(0.2GW)でした。欧州合計で最大の中国に匹敵する新規導入量となります。GWEC(Global Wind Energy Council)では2020年から2024年の間に50GWを超える新規プロジェクトが開始されると予想、米国や台湾、韓国などでも事業が始動するなど、洋上風力発電市場は今後も拡大が続く見込みです。

 
 
洋上風力国別新規導入量2020
洋上風力発電新規導入量2020(国別)
 
 

実際、世界の洋上風力発電容量は、現在約32GWに達しており、そのうち、約22.9GW(約7割)を欧州が占めています。欧州、アジア、米国にておいて稼働している洋上風力発電所に、162箇所(*)にのぼります。

(*)少なくとも2基以上の洋上風力タービンが稼働している発電所をカウント

世界の洋上風力発電量(稼働中)推移

世界の洋上風力発電容量推移

Global Offshore wind capacity in operation by country世界の洋上風力発電容量(国別)

出典:WORLD FORUM OFFSHORE WIND『Global Offshore Wind Report 2020』

 

欧州各国で進む風力発電

シンクタンクの独アゴラ・エナギーヴェンデと英エンバーが2021年1月に共同で発表した内容によると、欧州連合(EU)の域内において、2020年に初めて、再生可能エネルギーによる発電量が化石燃料による発電量を上回ったと発表しています。そのうち風力と太陽光が欧州の電力の5分の1を発電と報告されました。再エネ発電の比率が最も高かったのはオーストリアで79%。以下デンマーク(78%)、スウェーデン(68%)と続きます。

2020年欧州各国 発電量シェア(化石燃料・原子力・再エネ)-1

2020年欧州各国 発電量シェア(化石燃料・原子力・再エネ)
出典:Agora Energiewende/EMBER 『The European Power Sector in 2020』

このように風力の導入が進む欧州では、一部で陸上の適地が飽和状態となる等、導入に課題を抱える国がでてきたため、風量が多い洋上へシフトしています。欧州の風力発電業界団体「WIND EUROPE」(本部ブリュッセル)によると、陸上風力の新規導入は、全体量では未だ洋上風力より多いものの、足元10年間の平均は年間10GW前後で横ばいとなっています。(2020年の陸上風力新規導入容量は11.8GW)
欧州の風力発電導入量推移(陸上・洋上)

欧州の風力発電導入量推移(陸上/洋上)
出典:Wind Europe 

一方、2020年の上風力発電の新規導入の設備容量は2.9GWと、09年の0.8GWから大幅に増加し、今後さらに加速していく見込みです。国別では、英国、ドイツでの導入の始まり、近年ではオランダ、スペイン、ベルギーなどの国が積極的に導入していることがわかります。

欧州の洋上風力発電容量の推移

欧州各国の洋上風力導入容量の推移
出典:Wind Europe 『Offshore Wind in Europe Key trends and statistics 2020』

グリーンリカバリーにおける風力発電の存在感

国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年の欧州の電源割合は、原子力が約21%、再生可能エネルギー(水力、バイオ、風力、太陽光)は43%で、そのうち風力が約14%を占めています。

欧州の2020年発電量

 欧州の2020年発電量(3628.7TWh(テラワット時))
出典:IEA

EUは、2050年の温暖化ガスネットゼロを目標に掲げていますが、その目標を達成するために、電力部門では再生可能エネルギーもしくは原子力に移行する必要があります。そのため、EUは2020年11月、現行約12GWの洋上風力発電能力を2030年までに60GW、2050年までに25倍の300GWへ引き上げる計画を公表しました。

実現に必要な投資額は、50年までに官民で8千億ユーロ(約99兆円)にのぼります。COVID-19の経済対策である復興基金や欧州投資銀行(EIB)の融資制度を活用し、再生エネルギーの開発に資金が流れるよう、EUが積極的に後押しする方針を打ち出しています。

欧州の洋上風力に注目が集まる背景とは

洋上風力普及のカギを握るのは、”適地”の選定と発電コストと言われています。

欧州・北海では、沖合40キロメートル以上まで遠浅が続く、風力発電所建設に非常に適した地形が多く存在します。同地域では、風を遮る山や建物などの障害物が一切ないため、風の力を効率よく発電に結び付けられるだけでなく、発電量の予測も立てやすいという特徴があります。以前は、陸上風力と比べると発電コストの面で追いつかない部分がありましたが、技術の進歩で洋上風力の発電コストの競争力が高まったことも、増加の要因の1つとしてあげられるでしょう。2019年時点で1000kwh当たり約80ドル(約8700円 1kwh=9円以下)と、10年間で約半分になったことも普及に拍車をかけました。

 

陸上・洋上風力 画像出典:資源エネルギー庁

前編では、特に欧州における風力発電の現状をご紹介しました。後編では日本における洋上風力発電の現状や、欧州視点からみる日本の洋上風力発電市場について解説します。ぜひ後編もご覧ください。

当社グループでは、風力発電事業の取組として、立地環境調査、設計、物流、建設からO&Mまで、風力発電に関連するお客様の困りごとにで幅広く対応しています。サービス概要は以下よりダウンロードいただけます。

 

風力発電事業 pamphlet

AKINA.H

記事投稿者:AKINA.H

2014年中途入社。自動車船の三国間輸送の事務、ばら積み船での運航担当等を経て、2020年4月よりマーケティング部門にて本サイトの運営に携わっております。ニュースレターの作成も担当していますので、購読頂けると嬉しいです!仕事には炭酸水とカフェラテ、二日酔いにはトマトジュースです。

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