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海洋事業コンサルティングにおけるシミュレーションは課題解決の生命線!

  • 海運全般

2022年04月12日

当社は、船舶や港湾を含む“海”に関する様々な事柄(本ブログでは「海事」と呼びます)におけるコンサルティングに携わっておりますが、依頼される中で「シミュレーション」を行う案件があります。ひと口にシミュレーションと言っても大変多くの種類があり、手法もさまざま。

高性能操船シミュレータを使った、海の案内人である水先人や当社乗組員の技能向上のための仮想訓練にもシミュレーションは大変重要ですが、海事コンサルティング案件においても様々な場面で活用されています。「仮想」ではなく海運事業者や港湾事業者がまさに直面している「現実」の課題を、シミュレーションによる分析によって解決できるからです。

今回は海事コンサルティングにおけるシミュレーションについて、具体的な事例も挙げながらわかりやすく解説します。海上交通や港湾に関する課題をお持ちのみなさんは、ぜひ参考にしてください。

海事コンサルでシミュレーションが持つ意味と役割

海事コンサルティングの案件で行うさまざまな「シミュレーション」は、いずれも当社の社員が充分な時間と手間をかけて取り組みます。それは海事の問題解決プロセスでシミュレーションを行うことに、大きな「意味」と「役割」があるからです。

シミュレーションが持つ意味を、ひと言で表現すると以下のようになります。

・シミュレーションは現象の再現&予測ツール

また、シミュレーションの重要な役割を挙げると以下の2つになります。
・特定の環境での現象を再現して改善の糸口を探す
・想定される環境での現象を予測して対策を検討する

これらの3点について、詳しく見ていきましょう。

シミュレーションは現象の再現&予測ツール

大前提として、海事の課題解決の王道は「現象の再現と予測」にあります。シミュレーションはそのための優れたツールです。

海上や港湾でのある一定の環境を想定し、シミュレーションにてそこで起こりえる事態を再現します。そしてそれが何を引き起こすかを予測することは、海事の問題を解決するために欠かせない「機能」です。

シミュレーションによって、さまざまな現象がリアリティを伴って理解できます。コンサルティングで再現性の高いアプローチを提案するためには、机上の計算による予想だけで行うのでは不充分です。

入手し得るあらゆるデータをもとに行う、周到なシミュレーションの結果を分析してこそ、再現性において一定以上の信頼ができるアプローチを考案できます。

特定の環境での現象を再現して改善の糸口を探す

海事のコンサルティングで扱う一般的な案件は、大きく2つの主要分野に分かれます。「海上交通環境に関する課題」と「係留や荷役に関する課題」です。

そのうちの「海上交通環境に関する課題」をテーマとする案件を想定した場合には、課題となっている海上での特定の状況を、詳細な調査データによって再現します。

そして、その状況下で改善の意図を盛り込んだ複数のモデルを試すことによってこそ、安全性や効率性を分析・評価できるのです。

そうすることにより、課題を改善する糸口を見つけることができ、海上交通環境における問題解決に有効となります。机上の計算だけではわからない解決法にたどり着く可能性が高まることに、シミュレーションの大きな役割があるといえるでしょう。

海事コンサルシミュレーション 目視観測基地の例

 

AISデータ

 

左図)目視観測基地の例
右図)レーダ・AISデータ

AISに関するブログはこちら

想定される環境での現象を予測して対策を検討する

海事のコンサルティングで扱う2つの主要分野のうち、「係留や荷役に関する課題」をテーマとする案件では、実にさまざまな環境が想定されます。

それぞれの環境下で起こる現象を、リアルなデータに基づく綿密なシミュレーションによって予測するのです。その結果から安全性や実行可能性などを分析・評価します。

データをデータのままで終わらせず、優れた対策を検討するための「たたき台」につなげるのが、シミュレーションの重要な役割です。

計算結果に基づく等波高比線図

左図)係留や荷役に関連する港湾形状と計算領域の設定
右図)計算結果に基づく等波高比線図

シミュレーションを使った課題解決のポイント

海事の課題解決のための、シミュレーションを包含するコンサルティングにおける取り組みの重要なポイントは、以下の2つとなります。

・入念な調査と目的に応じたシミュレーション手法の選択
・高性能操船シミュレータの活用で操船者視点に立った分析

それぞれのポイント別に、詳しく見ていきましょう。

入念な調査と目的に応じたシミュレーション手法の選択

海事コンサルティングに取り組む導入部で重要なのは、そのテーマに関係するさまざまなデータを集める基礎調査です。その一環として徹底した海上交通実態調査を実施し、現状の特性を分析することに努めます。

この調査が綿密で正確であればあるほど、シミュレーションが盤石な基礎の上で実施され、その効果を高めるのは明らかです。

同様に重要なのが、個々のコンサルティングの目的に応じたシミュレーション手法の選択となります。コンサルティングのテーマに適した、海上交通現象を再現するために重要な要素となります。

例えば海上交通の「場」の変化を定量的に把握する目的の場合に適した手法は、「海上交通流シミュレーション」、船舶航行の効率性の把握に適した手法であれば、「待ち行列(ネットワーク)シミュレーション」です。

一方、操船困難度の高い条件下での航行安全性の定量的および主観的な把握や、適切な操船方法の理解のためには、3Dフルミッション型(もしくは2D鳥瞰図型)の操船シミュレータを使用した「操船シミュレーション」を選択します。

当社は2012年に国内の民間企業として初めて、3Dフルミッション型高機能操船シミュレータを導入しました。

360度をカバーする全方位視野と下方視野機能を備え、従来のシミュレータでは死角となるブリッジ後方の映像や、離着岸の際に岸壁をブリッジ・ウィングから俯瞰する映像を投影できます。

操船者の視野を妨げない、臨場感あるバーチャル環境を再現することが可能です。

また、海域におけるさまざまな外力がある条件下での、個別船舶の航行安全性や運動性能を定量的に把握する目的の場合には、「ファストタイム・シミュレーション」を選択するのが妥当です。

ほかにも、操船困難度の高い外力条件を想定した場合の「航行中の船体動揺シミュレーション」や、錨泊中の船舶を想定した「錨泊シミュレーション」という手法もあります。

シミュレーション手法の選択は、提案の精度に影響する要素です。よりよい提案を導き出すために、コンサルティング案件の目的にとってベストなマッチングの選択を、常に当社は心がけております。

3Dフルミッション型高機能操船シミュレータ

3Dフルミッション型高機能操船シミュレータ

高性能操船シミュレータの活用で操船者視点に立った分析

海上交通の安全に関するコンサルティング案件の中で、操船シミュレーションの実行が必要もしくは有効と考えられる案件においては、3Dフルミッション型高機能操船シミュレータを活用して操船者視点に立った分析と評価を行います。

なお、操船者のトレーニング用に使用する際の配慮も万全です。トレーニングの精度をより高めるために、グローバルスタンダードに適応できるよう、実際に運航船に搭載されるものと同種の航海計器類を設置しています。

ここからは、それぞれのシミュレーション手法を詳細に解説していきます。

海上交通環境に関する課題で行うシミュレーション

海事コンサルティングの主要2分野のうちの「海上交通環境に関する課題」では、以下の6種類のシミュレーション手法が実施可能です。

・海上交通流シミュレーション
・待ち行列(ネットワーク)シミュレーション
・ファストタイム・シミュレーション
・フルミッション型操船シミュレーション
・航行中の船体動揺シミュレーション
・錨泊シミュレーション

各シミュレーションの概要を見ていきましょう。

海上交通流シミュレーション

海上交通流シミュレーションでは海上交通の「場」をリアルに再現し、検討中の事業の実行可否を判断するために、実行しない場合と比較して海上交通流にどのような影響が出るのかを予測します。

安全性や効率性などを、マクロ的に分析・評価することが可能です。事業の実行についての可否の判断、および実行する際の安全対策に寄与します。

実海域における船舶交通データをもとに、船舶交通流をシミュレーションした航跡図を作成し、同海域の海図に重ね合わせた状態で認識可能です。

航跡密度分析では単位面積あたりの航跡数に加えて、船舶交通の輻輳状況や船舶の大小差を加味して把握し、海図上の色の濃淡で確認できます。

見合い関係別出会い頻度の分析では、港湾周辺での一定時間内(例えば5分など)の船舶同士の見合い関係の出現回数や場所が、シミュレーションされた分布図上で確認可能です。

ほかにも、基線通過隻数分析シミュレーションや速力分布分析シミュレーションなどが実施できます。

海上交通流シミュレーション

待ち行列(ネットワーク)シミュレーション

待ち行列(ネットワーク)シミュレーションを活用すれば、海上交通における諸々の制約条件から生まれる「待ち」の状況をリアルに再現できます。

そして後述する重要9項目の分析によって、安全性とコスト効率の両面から最適な配船のパターンなどを導き出せる上に、ボトルネックを特定してリスクの芽を摘むことが可能になります。

事業実行の可否において判断材料となり、実行する際には安全対策を講じるデータとして活用可能です。
制約条件の例を挙げておきましょう。

【航路に関する制約条件】
・水深(潮汐)と喫水の関係
・夜間航行制限
・水先引受基準(風速、流速、視程など)
・管制信号
【保管施設に関する制約条件】
・施設容量
・最低在庫水準
【港湾内に関する制約条件】
・入出港基準(風速・流速・視程など等)
・船舶諸元、荷役施設との整合性のある岸壁での他船係留の有無
・管制信号
【荷役に関する制約条件】
荷役中止基準(風速、天候、潮位等)

これらの制約条件を結節点あるいは経路に設定し、船舶が条件を満たしている場合にのみ通航可とします。
潮汐に関しては、対象海域を所管する「水路書誌担当部署」が発行する潮汐表等によって、通航日時の潮位推定が可能です。

気象・海象条件に関しては、対象海域の統計資料に基づく月別の発生確率から推定して、シナリオ化します。
それをプログラム上に落とし込み、対象とする気象・海象条件を「発生期間」「発生時間帯」「発生頻度」に従ってランダムに発生させることが可能です。

待ち行列シミュレーションの結果から​​分析される重要項目としては、以下の9つが挙げられます。

・輸送量
・輸送費用
・待機時間
・滞船時間
・滞船/早出料
・航海数
・輸送費用低減方策の提案
・最適配船パターンの提案
・ボトルネック箇所の明確化

待ち行列シミュレーションの設定例(通行判断フローの設定例)

待ち行列シミュレーションの設定例(通行判断フローの設定例)

ファストタイム・シミュレーション

ファストタイム・シミュレーションはある港に、これまで入港したことのない船型が入港できるかどうかを検討する際に用います。

その結果から対象とする船舶において、船体運動特性の把握と航行が困難な環境となる条件の抽出が可能です。

風向・風速、波向・波高、流向・流速などの多種多様な外力条件を組み合わせた船体運動状況を、非常に短時間でシミュレートできます。

ファストタイム・シミュレーションの具体的な事例を、2つ挙げておきましょう。

【事例A】

航跡図から求められる回頭円直径や重心偏位量に基づく「外力条件の違いによる回頭性能のシミュレーション」によって、回頭泊地の位置・広さの妥当性や回頭操船に必要な制御条件について評価します。

【事例B】

航跡図や制御量・状態量の時系列グラフに基づく「外力条件の違いによる保針・変針性能シミュレーション」によって、船体運動の状況、航路端との離隔距離、安全な操船に必要な制御方法について、評価します。

航跡図の一例

外力条件別の180°回頭時の航跡:青枠の船体が異なる外力条件下で180°回頭(赤枠の船体)する際にどのような航跡をとるか、またその回頭円はどの程度の大きさとなるかをシミュレートしたもの

フルミッション型操船シミュレーション

フルミッション型操船シミュレーションでは3Dフルミッション型高機能操船シミュレータを用いて、想定される操船環境の下における、操船者の構造物に対する心理的な影響や視覚影響を把握することができます。

外力の影響に対する人による制御方法や、それに伴う船体運動状況をリアルタイムで把握することが可能です。

気象・海象条件(天候・視程・風向・風速・波向・波高・流向・流速)や地形条件(岸線・水深・港湾施設・灯浮標)が景観も含めてリアルに設定されます。

また、他船の動静も設定可能です。船舶通航実態調査や海上交通流シミュレーションの結果から、あらかじめ船種・船型・経路が設定されます。

定量的評価指標は制御量・操舵量・機関使用量・状態量・針路・速力です。一方、主観的評価指標は操船者・立会人による操船困難性評価となります。

なお、同じ航行環境の下で、2隻同時のシミュレートが可能です。

フルミッション型操船シミュレーションの具体的な事例を、2つ挙げておきましょう。

【事例A】

防波堤・灯浮標・航路端との離隔距離や船体運動状況、安全な操船に必要な制御方法などについて、航跡図や制御量・状態量の時系列グラフに基づいて評価します。

【事例B】

上記のようなシミュレーションの実施後に操船者(水先人や船長)から操船状況や操船上の留意事項などに関する簡潔なインタビューを行い、立会人による操船局面ごとの主観評価(5段階評価・AHPなど)を実施します。

3Dフルミッション型高機能操船シミュレータ

3Dフルミッション型高機能操船シミュレータ

航行中の船体動揺シミュレーション

航行中の船体動揺シミュレーションでは、航行中の船体に関して外力(風・波浪・潮流)によって生じる、刻々と変化する6方向の船体運動状況を把握できます。

航行中の船体動揺シミュレーションの実施に当たっての条件設定は、以下の4項目となります。

・対象船舶の主要スペック・速力
・風:風向・風速
・波浪:波向・波高・周期
・潮流:流向・流速

錨泊シミュレーション

錨泊シミュレーションでは、錨泊中の船体に関して外力(風・潮流)によって生じる時々刻々の船体振れ回り運動状況や、錨鎖に作用する張力を把握できます。また、船底の着底や走錨の可能性の評価が可能です。

錨泊シミュレーションの実施に当たっての条件設定は、以下の5項目となります。

・水域施設の諸元(水深・底質等)
・対象船舶の主要スペック
・錨種類・錨鎖長
・風:風向・風速
・潮流:流向・流速

錨泊シミュレーションのイメージ

錨泊シミュレーションのイメージ

係留や荷役に関する課題で行うシミュレーション

海事コンサルティングの主要2分野のうちの「係留や荷役に関する課題」では以下の2種類のシミュレーション手法が実施できます。

・波浪変形シミュレーション
・係留中の船体動揺シミュレーション

それぞれのシミュレーションの概要を見ていきましょう。

波浪変形シミュレーション

波浪変形シミュレーションでは、港外の波浪が港内へ進入した場合を想定して、港内波浪状況を推算できます。

「港内静穏度解析」では計算領域の港湾形状と波浪条件を設定し、任意地点における時系列波形・有義波高・平均周期・波向などが算定可能です。

「ブシネスクモデル」では波の伝播を時間と空間の領域で数値積分することによって、海底の地形変化に伴う波の浅水変形・屈折・回折・反射、流速の時間変動や水位などが計算できます。

主に以下のような内容が分析可能です。

・防波堤、岬等の障害物による回折・反射・透過変形
・複雑な海底地形(水深の変化)による屈折・浅水変形・砕波変形
・水面波の非線形性・不規則性・多方向性

このシミュレーションにより、港内外で生じる複雑な波浪変形を同時に考慮して、実海域で起こり得るうねりや長周期波の変形を適切に推定できます。

係留中の船体動揺シミュレーション

係留中の船体動揺シミュレーションでは、係留中の船体に関して外力(風・波浪・潮流)によって生じる、6方向の船体運動状況を把握できます。また、係留索の伸び特性や防舷材の反力特性を加味した動揺量の評価が可能です。

船体動揺シミュレーションの実施に当たっての条件設定は、以下の3項目となります。

・係留施設の諸元(地形・水深等)
・附帯施設の配置および性能(防舷材・係船柱・係留索)
・対象船舶の主要スペック

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シミュレーションで出す解答とは?

海事の課題を扱う海事コンサルティングにおいて、種々のシミュレーションで出す解答の在り方には、以下のような2つの方向性があります。

・海上交通環境の安全性や効率を評価して改善策につなげる
・事業の経済性を評価して施策や戦略につなげる

それぞれの方向性について、詳しく見ていきましょう。

海上交通環境の安全性や効率を評価して改善策につなげる

シミュレーションを活用して、海上交通環境の安全性や効率を評価し、業務の仕組みやプロセス、ルールの改善策につなげることができます。

例えば、海上交通の安全性を評価する指標のひとつに「BC(Blocking Coefficient)値」があります。

BC値は自船が変速と変針による避航を行う場合に、周囲に存在する船舶群との衝突リスクに変速と変針の避航手段の選好度(操船手段として望ましい度合い)を表す「重み係数」を乗じて、周囲の船舶によって閉塞される度合い(避航操船空間閉塞度)を示します。

BC値が上昇するほど操船自由度が低下する、つまり操船の難易度が上がることを示しており、BC値の取り得る範囲は0〜1です。

これを用いて海上交通の安全性評価のために、可航幅や漁船配置位置を変化させた際のBC値の変化を、シミュレーションにより時系列で比較検討するとしましょう。

航跡図や制御量、状態量などからシミュレートすることにより、どれくらいの可航幅やどのような船配置位置で、BC値のピークが高くなるか、BC値の高い時間がどれくらい継続するのかなどが把握可能です。

それによって海上交通環境の安全性に配慮した改善や、効率を向上させる施策が打ち出せます。

また、フルミッション型操船シミュレータを活用した操船シミュレーションを行うことにより、昼と夜の違いによる見え方の違いや避航(制御)のタイミングおよび量、状態量の違いが把握可能です。

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船橋からの視点の例

また、可航幅、漁船配置の違いによる避航(制御)のタイミングおよび量、状態量の違いも同様に理解でき、それらの情報を操船業務に活かすことができます。

シミュレーションの安全性評価の成果としての事例を、2つ挙げておきましょう。

2021年3月から4月に茨城県の大洗港実岸壁において、総トン数11,410トンの大型カーフェリーを用いた実岸壁自動離着桟の実証実験を、安全性を検証する周到なシミュレーションを通じて成功させました。

また、2022年2月6日から7日にかけて、実際の商業航海ルートで行った型カーフェリーの無人運航実証実験にも、高度なシミュレーションの成果として成功しました。

北海道の苫小牧港から茨城県大洗港までの約750kmにおける、約18時間にわたる無人運航です。これは無人運航としての世界最長時間および最長距離の記録となっています。

これらの成功は、必要な機器を搭載すれば船舶の種類を問わず安全性を担保しつつ、自動運航や無人運航が導入できる可能性を証明しました。

事業の経済性を評価して施策や戦略につなげる

シミュレーションを活用して、開始を検討している事業の経済性を評価し、施策や戦略につなげることができます。

事業(港湾整備・航路整備など)により発生する社会的効果(便益)と社会的費用(事業費)を貨幣価値に置き換えて表現し、比較することが可能です。

対象事業により、事業主や地域、行政においてどれだけの経済効果が得られるかを金額換算するシミュレーションを行います。

考え方の事例を挙げてみましょう。

【安全便益の考え方の事例】

航路整備による将来の船舶の見合い関係が、どのように変化するのかをシミュレートしたとしましょう。

整備によって海難の減少が想定できれば、海難に伴う以下のような項目について将来の額も推定できます。

・船舶損傷に伴う損失額
・舶修繕期間中の損失額
・人的被害額
・積荷損失額
・事故船処理に伴う損失額
・流出油による海洋環境汚染に伴う損失額

これらを現状と比較した結果から、かかる費用から得られる効果を差し引けば、事業実施の可否が判断しやすくなります。

【輸送便益の考え方の事例】

シミュレーションにて航路整備により、将来の輸送時間・燃料費などの費用の減少が想定できるなら、事業の実施の意義を認めることができます

【港湾施設整備による効果の貨幣価値換算の考え方の事例】

シミュレーションによって単位の異なる指標を同列の貨幣価値に置き換え、便益(経済効果)として総合的に把握することができます。

例えば以下の3項目をシミュレートします。

・海難および海難による死亡者減少(安全性の向上効果)
・輸送ルート短絡化・大型船の運航(効率性の向上効果)
・消費燃料の減少(効率性の向上効果)

これらを貨幣価値換算により統合し、包括的な経済効果として把握することで事業の実施の可否を判断できます。

シミュレーションは海事案件解決の生命線

海事のコンサルティング案件におけるシミュレーションは、周到な調査と綿密な検証が必要な作業です。それによって事業の実施後の安全性や経済効果などの、精度が高い推定が可能です。

シミュレーションを行わない思索のみの議論では、確度の低いトライアルになるところが、一定水準の信頼が伴う高確度のトライアルに持っていけるのです。つまり、シミュレーションは海事案件解決の生命線と言っても過言ではありません。

海上交通や港湾に関し課題をお持ちでしたら、当社の高精度を誇るシミュレーションを活用したコンサルティングサービスをぜひご検討下さい。

 

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