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「脱炭素」「地域社会の活性化」に貢献 海洋再生可能エネルギー事業

  • エネルギー
  • 環境負荷低減

2023年03月16日

現在、世界中で脱炭素社会の実現を目指して、再生可能エネルギーへの転換が推し進められています。再生可能エネルギーとは、化石燃料以外のエネルギー源のうち、永続的に利用可能な資源でつくられるエネルギーのこと。資源としては太陽光や風力などが一般的ですが、国土が小さく山がちな日本では設置場所の問題もあり、それだけに依存するのは難しいと言われています。そこで、海運会社である商船三井は「海」に着目。海洋資源を用いた再生可能エネルギー事業への取り組みについて、コーポレートマーケティング部 営業企画チーム チームリーダー・松岡哲史氏にお話を伺いました。

無尽蔵のエネルギー源を持つ「海」は、可能性に満ちている

  • ――まず、海洋再生可能エネルギー全般について教えてください。
  • 松岡

    海洋再生可能エネルギーとは、再生可能エネルギーのうち、 ①洋上風力発電、②波力発電、③潮流発電、④海流発電、⑤海洋温度差発電(OTEC)の5つを指します。地球表面の70%を占める海には海水、波といったエネルギー源が無尽蔵にあり、さらに荒天などの気象条件に強く、安定的な電力供給が見込める点から近年期待が高まっている分野です。5つの中で唯一、大規模に商用化されている洋上風力発電は約15億kWのポテンシャルがあると試算されており*、ご存じの通り大規模なプロジェクトの開発が日本国内でも近年進められています。
  • (*)内閣府 "特集 海洋再生可能エネルギーの利用促進について"

Ocean Energy

出典:The National Renewable Energy Laboratory is a national laboratory of the U.S. Department of Energy, Office of Energy Efficiency and Renewable Energy, operated by the Alliance for Sustainable Energy LLC.

これらの海洋再生可能エネルギーのうち、商船三井では洋上風力発電、波力発電、OTECの領域へ参入し、研究開発~事業化を目指しています。

海洋再生可能エネルギー

  • 中でも洋上風力発電にはいち早く着手し、2021年には専門の事業部を立ち上げました。海・船・浮体構造物についての豊富な知見を活かし、洋上風力のバリューチェーン全体への貢献を目指しています。

風力発電関連事業への取り組み

MOLの手掛ける風力発電関連事業への取り組み詳細はこちらよりダウンロードいただけます。

次世代の発電技術「OTEC」で地域社会を共につくる

  • ――特に注力されているOTECとは、どんな発電技術なのでしょうか?

    松岡

    簡単に説明すると、冷たい深層水と温かい表層水の温度差を利用してアンモニアなどの媒体を蒸発させることでタービン発電機を回して発電する仕組みです。海水の表面温度が高い赤道周辺が適地であり、日本周辺では沖縄が該当します。日本では1970年代から佐賀大学が中心となって研究を進めてきた歴史と蓄積があり、これに政府の後押しも加わったことで大きな注目を集めています。私たちはこのOTECの事業化において先駆者となるべく、積極的に事業開発に取り組んでいます。
  • OTECの仕組み
    OTECの仕組み

久米島にあるOTEC施設
久米島にあるOTEC施設

  • 特徴として、まず設備利用率が非常に高いことが挙げられます。たとえば日本国内での太陽光発電の場合、夜間や悪天候時はほとんど発電できないので利用率は20%程度にとどまります。洋上風力も風がある・ないという影響を受けるため20~30%程度と言われています。一方OTECは85~90%という高い利用率を誇ります。使用する資源は海水ですので日間変動がほとんどなく、熱帯地域では季節の影響も受けにくいのです。

    さらに省スペースであることも重要です。陸上に必要な面積は太陽光の1/100ほどですから、電力インフラが脆弱な、小さな島々や、島しょ国などでも設置場所を取らず、また景観も阻害しません。

 

  • ――くみ上げた海水の二次利用が注目されているそうですね。
  • 松岡
  • はい、そこがOTECの最も大きな魅力です。「久米島モデル」と呼ばれる沖縄県久米島での例を挙げると、海洋深層水の用途の幅広さがよくわかります。そもそも海洋深層水とは、水深200mより深いところにある海水の総称で、「清浄である(清浄性)」「栄養価が豊富(富栄養性)」「低温で安定している(低温安定性)」という特徴があります。久米島では海洋深層水の産業利用のため、20年以上前から取水管が設置されており、清浄性や富栄養性を活かしてクルマエビや海ぶどうなどの養殖、化粧品、健康食品、飲料などに利用されてきました。関連製品の生産額は年間約25億円以上に及び、島の一大産業として成長を続けています。また低温安定性を活かし、ハウス栽培の冷房に利用することで葉物野菜を育成できるようになるなど、さまざまな領域での活用も広がっています。OTECでの利用はその派生のひとつであり、実用化されれば周辺地域でのエネルギー、水、食料の自給自足も可能になるでしょう。

久米島モデル

出典:株式会社ロート・F・沖縄

久米島

  • 海洋深層水を発電だけでなく地域のさまざまな産業に役立てていくことで、産業を育て、街づくりや地域社会への貢献ができるのがOTECの魅力です。船や海に精通した海運会社として社会課題を解決したいと考えたとき、OTECは大きな可能性を持った事業のひとつです。2025年の実用化を目指して実証実験を計画しており、ゆくゆくはモーリシャスやインドネシア、マレーシアなどでの海外展開も検討中です。電力需要だけでなく海洋深層水の活用が見込めるエリアを開拓し、世界中にこのソリューションを広げていきたいですね。

OTECと海洋深層水複合利用モデル図

  • また将来的には発電設備を洋上にも設置し、より大規模な発電ができる浮体式OTECの構想も視野に入れています。今後、商船三井の柱となる事業へと成長するよう、歩みを止めずにチャレンジしていきたいです。

OTEC MOL

 

松岡 哲史 Tetsushi Matsuoka
2005年中途入社、2019年度からコーポレートマーケティング部に所属。新規事業分野の開拓はなかなか結果が出ませんが、「迷わず行けよ、行けば分かるさ」の闘魂スピリットを胸に取り組んでいます。仕事で落ち込んだ時には”8mile”を観て元気をもらいます。

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