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世界で活躍する商船三井「香港編」~エネルギッシュな国際都市と共に歩み続ける~

  • 海運全般

2022年10月14日

世界で活躍する商船三井 香港

地域代表主催で開催したMOL FSRU Terminal社の国際色豊かなメンバー達と
VOPAK社との研修後の打ち上げ会

長い歴史を香港とともに。
2021
年に
50周年を迎えた「MOL Hong Kong Limited

商船三井の歴史は、1878年(明治11年)に鉄製蒸気船「秀吉丸」で三池炭の海外輸送(口之津~上海間)を始めたのがきっかけとなり、その後1884年(明治17年)に大阪の中小船主55名が合同で設立した「大阪商船会社」が始まりです。

 香港への航路がスタートしたのが1899年。そして2年後の1901年に香港に本社直轄の出張所を開設、翌年1902年には支店に昇格し、南シナ海のそばの香港港を眺めるセント・ジョージ・ビルにオフィスを構えることとなりました。大阪商船と三井船舶が合併した大阪商船三井船舶(のちの商船三井)が、1971年に「Mitsui O.S.K. Lines (H.K.)」を設立し、2021年には設立50周年を迎えました。

様々な時代を経て香港は国際的な都市としてさらに発展。東洋と西洋が出会う場所として自由貿易と国際金融センターとしての機能を武器に、国際的貿易拠点として活気づいています。こうした歴史とともに成長を続けてきました商船三井ですが、香港の現在とこれからの展望について、香港地域代表の浅井亮吉氏にお話を伺いました。

 MOL Hong Kong Ltd. Webpagehttps://mol-hongkong.com/

 

      商船三井(当時の大阪商船)が香港のセント・ジョージ・ビルに構えたオフィス外観

1902年に商船三井の前身となる大阪商船が香港のセント・ジョージ・ビルに構えたオフィス外観

多様な事業分野を担うグループ会社が集積

浅井

  • これまでの香港と当社との長く、深い繋がりから、当地には様々な事業分野を担うグループ会社が集積しています。私がMDを勤めるMOL Hong Kong社は後述するシェアードサービスの提供や、船舶代理店業を展開し、自動車船やドライバルクなど様々な船種の安全かつスムーズな香港入出港、荷役をサポートしています。更に当社の地域戦略の重要な柱となる新規事業開拓の推進役を担います。ロジスティクス事業では、PO ManagementConsolidation事業を展開するMOConsolidation Service社、NVOCC事業を担うMOL Worldwide Logistics社は当地に本社を構えています。同じく商船三井ロジスティクスの香港現地法人、MOL LogisticsH.K.)社も当地グループ会社の中では最大の要員数で航空、海上フォワーディング、倉庫等、総合物流事業を展開しています。
  • 更に当社グループのITを担うMOL Information Technology Asia社や、LNG事業の船舶管理を担う、MOL LNG Transport (Asia)社も当地に構えています。
    直近では、後ほど詳しくご紹介するMOL FSRU TerminalHong Kong)社が当地でのFSRU事業の本格稼働を目前に控え、組織を拡充しています。
  • また、船員さんの配乗替えの際の航空券や諸手配に特化した旅行代理店を担うグループ会社であるNew Asian Travel Agency社も当地に本社を構えていますし、当社出資のSouth China Towing社は当地でタグボートサービスを展開しています。その他にもJoint Venture会社など多種多様な機能を担うグループ会社、更には長い歴史に渡り当社を支えてくれているパートナーが香港に集積しています。

当社FSRU船投入による洋上LNG受入基地操業への参画

―― 香港での具体的な仕事の取り組みについて教えてください。

 

浅井

  • 現在、香港政庁の環境政策に応じ、地場電力企業が発電燃料の天然ガス化を進めており、香港初のLNG受入基地建設が進んでおります。当社はFSRU船を投入し、同基地操業へ参画します。
  • Floating Storage and Regasification Unit(FSRU)の詳細はこちら
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  • 発電燃料となるLNGは、-163℃という超低温の状態で液化することで体積を約600分の1に減らし効率的に運ぶことが可能です。本プロジェクトでは、洋上固定桟橋及び当社FSRU船にて、LNG船からのLNG受入れ、LNG貯蔵、LNG再気化を行い、約20キロと40キロの海底パイプラインを経て2か所の陸上発電所に高圧ガスを送出します。香港は市街地が密集しており、工業用地向けの土地開発余地が乏しいところ、陸上ではない洋上基地というFSRU船の特長がよく活かされたプロジェクトであると言えます。
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  • また、香港政庁は2050年の達成目標でカーボン・ニュートラルを実現する「Hong Kong’s Climate Action Plan 2050」を掲げており、いまはエネルギー利用の過渡期にあると言えます。本プロジェクトを礎として、香港政庁そして地場電力会社のエネルギー政策変遷に寄り添って、香港の人々の毎日を支え豊かな未来をひらく支えとして、将来にわたって関与していきたいと考えております。
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関連プレスリリース:
https://www.mol.co.jp/pr/2018/18046.html,
https://www.mol.co.jp/pr/2019/19042.html

 

世界最大FSRU MOL FSRU Challenger
世界最大のFSRU「MOL FSRU Challenger」

洋上風力発電の分野にも商機を見出す

――再生可能エネルギーへの転換について、商船三井として何か取り組まれていることはありますか?

 

浅井

  • 現在、香港には主な電力会社が2社り、それぞれ洋上風力発電のプロジェクトを発表しています。商船三井でも、先ほどお話したFSRUプロジェクトのネットワークも活かしながら、洋上風力発電の分野に切り込んで行きたいと考えています。具体的には、メンテナンスを行うService Operation Vessel(SOV)など当社が貢献できるフィールドは大いにあると考えています。
  • 香港では、いまのところ再生可能エネルギーの割合はまだわずか1%です。洋上風力発電プロジェクトは香港がカーボン・ニュートラルの達成に向けて欠くことのできない重要なプロジェクトだと思います。これまでの当社の実績などをアピールしつつ、同プロジェクトに参画することで香港のカーボン・ニュートラル達成に貢献することを目指します。
  • Eco Expo Asia 2021 MOL Hong Kong 
  • 202110月に香港で開催された「Eco Expo Asia 2021」に香港日本商工会議所と共に参加。洋上風力発電用のSOVService Operation Vessel)やWind Challengerなど、商船三井の活動を紹介しました。
  • 写真左のSOVの模型船(1/150サイズ)は、環境局長官のK.S.Wong氏(当時、写真右)はじめ多くの方が足を止めて見て下さいました。

香港を中心に推し進める、画期的なスチールコイル輸送部材「MOL COILPORTER®

――スチールコイルをコンテナ輸送する際の次世代架台として、浅井さん自ら新たなセキュアリングシステムを開発されたそうですね。

 

浅井

  • はい。手前みそながら発案から開発まで関連グループ会社とともに一貫して取り組み「MOL COILPORTER®」と名付けて商品化いたしました。日本以外では宣伝もしていなかったのですが、海外からのお問合せも多々頂き、これを機にMOL Hong Kong社内に新組織を立ち上げてグローバルに拡販を目指すこととしました。私たちが船舶で運ぶ様々な鋼材にスチールコイルというものがあります。帯鋼をコイル状にしたものです。外径は1m超、重量も10㌧以上あったりして非常に扱いづらい貨物です。

  • スチールコイル とは
  • コンテナ輸送の場合、現状では大量の角材を使用し、櫓を組み立てるように固縛しています。当然素人ができる作業ではなく、大勢の熟練の職人さんによって角材の採寸、切出しから組立て釘打ちなど全工程が手作業で進められます。また揚地では解体する作業も重労働ですし、廃材処理も必要となります。

スチールコイル輸送 木材固縛

  • 前世紀とかわらぬ労働集約的な作業は業界全体の課題となっておりました。誰でも安全にできる組み立て式で、何度も再利用できるスチールコイル専用の輸送部材を提案したいと考え、実現したのが「MOL COILPOTER®」です。発泡ポリエチレン製で毎回廃材を発生させないためエコですし、軽いので持ち運びも容易、誰でも簡単に組み立て可能。作業も高効率なのでバンニングの費用を抑えることもできます。ぜひとも多くのお客様にご利用頂くべく、広めていきたいと考えています。

    MOL コイルポーター® コンテナ輸送

コンテナ内でMOL COILPORTER®を用いてコイルが固定されている様子

関連動画(Youtube: https://www.youtube.com/watch?v=aIUeN6wEljQ
関連プレスリリース:https://www.mol.co.jp/pr/2020/20027.html

MOLコイルポーター 輸送
神戸発沖縄向けの内航在来船、フェリー輸送用に鋼材コイルを鉄道用コンテナに4個ずつ積載している様子(昨年10月~の1年間で約1000コイルを安全且つダメージなく輸送しています)

日本の高品質で安全な食材を、日本と同じ鮮度で香港へ

―― 日本の食品をコールドチェーンで輸送するプロジェクトも計画されているそうですね。

 

浅井

  • 香港は日本の農水産物の輸出先として世界のトップを争う地域です。魚や野菜、肉や卵、なまこやフカヒレなどの乾物も人気で、日本の大手スーパーも多数進出しています。日本食のレストランや居酒屋もたくさんありますが、いずれも大変美味しく、食べ過ぎてしまわないよう注意しているくらいです(赴任後5㎏ほど体重が増加し、ダイエット中です)。そこで日本の物流に関わる企業として、日本の安全で質の高い食品を、より鮮度の良い状態で提供できるよう、今後コールドチェーンにも取り組んでいこうと考えています。現在、グループ会社であるMOL LogisticsH.K.)とともに、日本領事館が主催する「香港日本産食品等輸入拡大協議会」のメンバーとして参画しています。先ずは客様のお困り事や需要の束の調査から着手。我々は後発組なので、差別化要素をしっかり組み入れて新たな価値をご提案することが必須だと考えております。課題山積ではございますが、当地や日本のグループ会社と協業して早期事業化を進められるようビジネスモデルの構想を練っていきたいと思います。
  • *コールドチェーン……生産から輸送・保管など、物流の入り口から出口まで一貫して、それぞれの食品に最適な温度で輸送すること。

長い歴史で蓄積された知識とノウハウで、シェアードサービスを提供

―― 香港には商船三井のグループ会社が数多くありますが、協力しながら進めている仕事はあるのでしょうか。

 

浅井

  • もちろん、通常の仕事で協力し合っていることはたくさんありますが、香港で特徴的な事例としては、「シェアードサービス」があります。香港には冒頭にご紹介した通りさまざまなグループ会社があるのですが、それらの会社の人事、経理、総務、業務のIT化などの管理部門をMOL Hong Kongに集約し、グループ会社に提供することで質の高いサービスと効率性を両立しています。個々のグループ会社の要員規模がさほど大きくない場合、それぞれが単独で管理部門の機能を、しかも高いレベルで維持していくことは非常に難しい現実があり、シェアードサービスを通じて、グループ全体として事業継続性、効率性と質の向上を目指しています。このような特徴的なサービスを展開できるのも、香港での長い歴史の中で経験値の高い専門人材を育成してきた経験あってのことと自負しています。
  • また従業員がより高い創造性を発揮して仕事と生活を充実させることができよう、働き方改革や、人事面ではグループ会社共同での教育やエンゲージメント向上を目指したプログラムを実施するなど、グループ全体の人材・組織の育成にも力を入れています。
  • 一例として、20228月には、在香港のグループ各社からの派遣も募ってリーダーシップ強化プログラムを実施しました。
  • MOL HongKong 研修

 

  • 2012年から実施している本プログラムは、リーダーシップ強化という目的に加え、グループ会社各社の幹部候補の皆さんが研修を通じ、各人の担当業務や所属会社のことを共有する良いきっかけにもなりました。

 

 

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  • 更に9月にはMOL Hong Kong社の社員全員でTeam Building研修を実施いたしました。MOL Hong Kong社では、Corporate PrincipleとしてCreative mindset, Adaptation to the environment, Relationship with customers, Enhance professional approachCARE)を掲げ、スタッフ一同の業務遂行の拠り所としています。
  • MOL HONKONG Corporate principal
  • 今回のTeam Building研修では、CAREをキーワードに、ランダムで組成された各グループが様々な課題やゲームに取り組むことで一体感の醸成や、協力、InnovationなどTeam Buildingの要素を実体験として獲得しました。

MOL Hong Kong チームビルディング   MOL Hong Kong チームビルディング研修

  • 参加した社員の多くから「次のTeam Building研修はいつ?」という声も多数あるなど非常に成果のある研修となりました。

MOL Hong Kong HR担当者

本研修の企画・準備をしてくれたMOL Hong Kong社のメンバー

 

エネルギッシュで国際的な香港は今後も健在で更なる発展に期待。日本との親和性も高まる

―― 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 

浅井

  • 香港は今後も国際金融センター、自由貿易港としての競争力を維持し続けると思います。香港とマカオ、広東省の3地域の経済を一体化し世界有数のベイエリアとして発展させるという、いわゆる「グレーターベイエリア構想」や、香港政府によって2001年に設立されたイノベーションとテクノロジーの発展を促進する「HK Science & Technology Park」におけるスタートアップ支援、さらには海外トップレベルの大学が設けている研究拠点の数々など、さまざまなビジネスチャンスをもたらす要素が豊富にあります。日本ではネガティブな報道が目立っていると感じますが、実際にはエネルギッシュで国際的な香港は健在で、今後の更なる発展が期待されます。
  • 20132014年あたりから日本への旅行客が一気に増加した背景には、幅広い層に日本旅行が浸透したことがあろうと思います。つまり、香港の皆様にとって日本が益々身近な国になったということだと思います。食べ物についても私が前回赴任した20002004年あたりでは、日本料理は高級でそういうお店は殆ど日本人顧客ばかりだったように記憶しています、そうでなければ香港テイストとミックスされた「日式」といわれる庶民向けの日本食が大半でした。それが今では、日本のレストランチェーンも数多く出店しており、一般的な家族連れも気軽に日本食を楽しんでいます。「コロナで日本に行けなくてつまらない。早く行きたい」と痛切に願われている香港の方々もとても多くて、日本との親和性はますます高まっていると実感しています。
  •  
  • Chief Regional Representative of Hong Kong, Mitsui O.S.K. Lines, Ltd.―― ありがとうございました。
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  • 浅井 亮吉 Asai Ryokichi

Managing Director, MOL Hong Kong Limited.

Chief Regional Representative of Hong Kong, Mitsui O.S.K. Lines, Ltd.

 1995年入社。MOL Hong Kongと同級生。キャリアの殆どはコンテナ船事業と物流事業。海外赴任は語学研修で北京、その後上海の中国現法本社で勤務。香港赴任は二度目で前回はコンテナ船事業で駐在。なぜだか、中華圏との縁を感じる海外経歴となっています。とはいえ広東語は全くしゃべれません。北京語と比べて各段に難しいですし、北京語も25年前に勉強したきりで、大分錆びついていますので、香港赴任中にどちらかは経歴に恥ずかしくないようマスターしたいと考えています。

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